◇7◇ ページ7
最近は死んだようによく眠るようになった。
電話機の音に起こされた時、窓の外を一瞬見ると夕暮れ。
『A。今どこだよ』
「…ジェヒョン」
『その声だと寝起き？』
「この番号で出てるんだから家にいるよ」
『寝てたからインターホン気付かなかったの？』
はあ、って小さなため息。
『今家の前にいる』
「…さっきテン達を帰したばっかりなのに、かわるがわるお見舞いに？」
『弟達が研究室に来たんだよ』
「…何で」
『マークに塩を投げに』
「はっ？」
声が裏返った。
「…弟って…もしかしてうちの？」
『おまえんちの』
「どういう事」
『テン達が言うには、動揺してたんじゃないかって』
動揺して。
「…塩を？」
『投げてた…』
「…」
『丁度何も知らない教授やジャニも居たから大騒ぎ』
「…何考えてんの…」
『ヘチャンが投げて、ロンジュンが後から止めに来た。マークが逃げて、机にぶつかって、書類が床に散らばって、教授が滑って転んで』
ふらっと意識が飛びそうになった。
想像したくもない。
『…それで俺が…2人を車に乗せてここまで来た』
「…苦労かけたね…」
『へチャニ、泣いてたんだ』
ジェヒョンが呟く。
そっと窓の外を見た。
『ヌナを悲しませるヒョンなんて、って。ヌナは自分たちを助けようとしただけなのにって』
「…適当なこと言ってるだけだよ」
『本気みたいだった。Aが溺れたのは自分たちのせいだって言ってた』
「…」
『とりあえず鍵開けてくれる？』
ベッドから下りると、思ったより足取りが重かった。
時間をかけながら玄関に行って、
扉を開けた瞬間、飛び出してきたのはヘチャン。
私に飛び込んで来て、抱きついた。子供みたいに。
後ろでジェヒョンが小さくため息をついて、ロンジュンが困ったような顔をしてる。
「…研究室で迷惑かけてきたの？」
「ヌナ、ごめんなさい、ただ…」
「マクヒョンはヌナを何も分かってない」
ロンジュンの言葉を遮って、ヘチャンが呟く。
「必死に回復したヌナに酷いこと言うなんて。ヌナを傷つけた」
「傷ついたか、どうかは、私が決める」
ヘチャンの肩を押して引き剥がした。
「傷ついたとして、あんたがマークに当たる権利は無い。どうしていつも人の関心に首を突っ込むの？そういう所が嫌い」
「悲しんでるヌナを見たくない」
「私があんたに塩を撒きたい。消えて」
ぐす、って目の周りを真っ赤にしながら、私を見てるヘチャン。
もう行こうへチャナ、って、
ロンジュンがヘチャンの腕を引っ張って部屋に入って行った。
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
