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「俺は今の方が幸せ…ヌナがずっと家にいるし」
ロンジュンはリビングの方に向かってる。
「Aは時間が出来て毎日風呂に入るようになるしね」
運ばれたクッキーをさっそく齧ってるテン。
お茶を注ぐ私の隣で、ヘチャンがううーって喉を鳴らした。
「ヌナが今までやってこなかったことをやって見ればいいよ。休みにショッピングに行ったり、コンサートに行ったり、弟とカフェに行ったり、弟と旅行したり」
「Aが研究者を辞めるメリット、以外に多くて困ったな」
ヤンヤンが小さく呟いた。
ヘチャンがお茶のトレイを運びに行く。
「死にかける前、ちょうど行き詰まってた時だったの。病院で目が覚めたら考えてた分どこかに飛んでってた」
言いながらソファに戻った。
「それはしんどいね」
ヤンヤンが頷く。
「マークとも喧嘩したし。研究室に来るの億劫でしょ」
えっ？
って、揃う弟たちの声。
「ヌナとヒョンが喧嘩？」
「マクがAに腹を立ててる。この間のことで」
テンが二人に振り返る。
「だから拗ねてお見舞いにも来ないんだよ」
「マクヒョンに怒りの感情が？」
「Aが与えた」
ヘチャンは目を丸くしてる。
「ヌナ」
ソファの端に座る私の隣に座ってきた。
「今から研究室に行こう。マクヒョンに会いに行こうよ」
「行かない」
「どうして？ヒョンはヌナのこと誤解してるんだよ…」
「私、どうかしてる」
え、って背中で途切れたヘチャンの声。
窓の外を見つめた。
「人の気持ちが分からない。自分のこともよく。私はどうかしてるんだと思う。普通の人にできることができない」
「ヌナ…ヌナ、そんなことないよ。ヌナは凄いのに」
「宇宙への情熱だけが取り柄だと思ってた。それも今はないの。どうでもいい」
体から心がふわふわ、天に昇っていく感覚。
その情熱を、マークも愛してくれたと思ってた。
相手が何年経っても変わらないことを願っていたことより、
自分が変わっていないことが、異常なんじゃないか。
「ヌナ…」
そっと腕に触れるヘチャンの指を、振り払って立ち上がった。
「A」
振り向くとテンが私を見上げていた。
「お前は人格者だし、どうなっても変わらず俺たちの友達だよ。色々あったけどそう気落ちしないで。少し休んだ方がいい」
隣でヤンヤンが大きい目を開いて、うんうん頷いてる。
「…じゃあ…」
小さくため息をついた。
「お言葉に甘えて…休んでくるよ。ゆっくりしてって」
「うん」
二人が交互に頷く。
弟たちだけが深刻そうな顔で、私を見つめた。
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
