◆If you are…◆ ページ25
ふわあああわあん、
って、調子の狂ったブラウン管テレビみたいな声で、
唸って天井を見てるヘチャン。
ヤー、って奥の席のテンが、面倒くさそうに相手してる。
「なんでまたいるの子供たちが」
「ヌナがこうして復帰してから、誰も構ってくれなくなって、寂しい思いをしてるんだよう」
臨時で出してもらった肘掛付きの椅子に、足を畳んで座って、
ヘチャンとロンジュンはクーラーに向かって口を開けている。
それもそうだ。
海で遊んだ日から、Aは止まることなく働き続けている。
食事も、睡眠も、風呂も放棄して、
実家に帰らず、研究室に泊まり込むようになって、バイトも辞めた。普段のAに戻ったらしい。
どこか寂しい気持ちもあるけど。
それに伴って俺達もフル稼働が求められるように。
研究発表まで二週間を切って、この所徹夜が続いてる。
隣の席で論文を顔に載せながら、椅子に座って寝てたジェヒョンが、
ああ！ってヘチャンの叫び声に驚いて体をびくつかせてる。
「この部屋ほんとにじめじめして窮屈な感じがして嫌だ、ヌナがずっと居たら病気になりそう」
「じめじめした窮屈な部屋にしてる張本人がヌナだろ」
そうジェヒョンが紙の束を机に戻して、目を擦りながら椅子に座り直してる。
ふわあ、って大きなあくびをする斜め前のヤンヤン。隣のテンは眼鏡をかけて、黙々と計算を手伝ってくれている。
「ヘチャナ、暇してるならアイスでも買ってくれば？Aが戻ってきたら色々言われるかも」
何となくそう言った。
ヘチャンが首を横に振る。
「冗談じゃない、俺たちはヌナに頼まれてここにいるんだからね」
そうだよ、ってロンジュンも体を起こす。
「俺たちはご指名付きなの。研究の二の次でほっとかれてるヒョンと一緒にされちゃ困るな」
「にっ、二の次…」
咄嗟に反論しようと思ったけど、まったく言葉が出てこない。
その時研究室の扉が開いて、図書館からAが戻ってきた。
その腕に資料を抱えて、机に雪崩のようにぶちまけてる。
「A、ここまで読んだから確認して」
ヤンヤンが翻訳した論文をAに手渡してる。前髪に大胆な寝癖がついてるけど、気にする暇もない。
「ありがとう、助かる〜、あんたを呼んでよかった」
「やっと素直に言ってくれた…もしかしてそれ全部読めって言わないよね？」
「こんなもんで終わると思った？」
ああ、って机に崩れ落ちるヤンヤン。
俺は自分の椅子に座りながらうずうず。
「注文してた分が届いたから取りに行くんだけど、量が多すぎて一人じゃ大変なの」
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
