◇3◇ ページ3
父親は私がヘマをすると、
外に出すとろくな事がないと言って、家に閉じ込めてしまう。
これまでにも何回か経験があった。
普段は私になんの興味もなく、家から追い出そうとするくせに。
とりあえず自分の部屋のベッドに横になると、いつまでも寝れた。
昼間の嫌な思い出から遠く離れるように。
ジェヒョンが一人でうちを訪ねてきたのは、それから二日後のことだ。
「よ」
「ハイ」
「元気そうだ」
玄関の前で、バスケボールを腰に持ったジェヒョン。
さっきまで寝てた私は声がよく出てない。
「奇跡の生還を遂げたのに、俺には何の連絡もなし？」
「ごめん」
「許そう」
「軟禁状態なの」
「見ればわかる」
何日目？って肩を竦めてる。
いつからかも数えてない。
「お前のヘチャンが俺に電話を寄越してさ。薄情なマークがヌナの様子を見に来ないから、代わりに来てくれって」
また余計なことを。
「…だからアレは嫌い…」
「まあ、外で話そうよ。そこらへん歩きながら」
「暑いし中にしない？」
「たまには陽の光を浴びないと脳にも悪い。俺たちソファに向かい合ってティーをすするような間柄でもないし」
そうだね、って頷いて、渋々外に出た。
嫌になる晴天と蝉の声が響いていた。
「マークからは聞いてるよ」
ジェヒョンはたまにボールを地面に打ち付けながら、コートまで歩いた。
「なあ、お前さ。そこまでマークを受け入れられないの？」
芝生の上で跳ねずに転がったボールを、腰を曲げて拾うジェヒョン。
「イケメンだし、優しいし、お前を理解してる。そこまで拒絶すること無いんじゃないの」
「…マークは怒ってたの？」
「最近はよく寝てるよ。お前みたいに。俺の膝で寝てる」
ウソでしょ、って呟いたら、いやマジだから、って返ってくる。
「お前が居ないから暇なんだよ。それは俺達も同じだけど」
「マークは平気だよ、私がいなくても。今はジョンウも居るし」
「そう言うなよ。出会った時の威勢はどうしたんだよ」
ため息をついた。
「私も困ってる。川の水に全部洗い流されたのか、研究のアイデアもあの日から全く思い浮かばないし」
「まだ混乱してるんだろ」
「もう一生思いつかないのかも。いっそ死んだ方が良かった？」
「本当に死んでてもおかしくなかったから、今は笑えない」
ジェヒョンが呟く。
「死ぬわけないでしょ」
「半分死んでたって。俺たちは一部始終を見てる」
「何も考え無しに飛び込んでないよ。あの川は下流につれて茂みと岩で河口が狭まる。万が一流されても何かにひっかかって流れ着くと思ったの」
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
