◇15◇ ページ15
「…私はただ」
少し言葉に迷って、思わず唇を尖らせる。
「誰かの負担になるのは嫌だし…」
「俺たちはヌナが居て幸せなんだよ。ヌナがいるから頑張ろうって思えるもん。ヌナ、俺たちのことを心配しないで。お父さんの事なら大丈夫。俺たちは二人だから我慢できる。ヌナはヌナの好きなことをして」
言いながら私の肩を抱き潰しそうなロンジュン。
「ねえヌナ」
ヘチャンもにこにこしながら、それに便乗した。
「愛してる。ヌナの弟はいつもヌナのことを想ってるよ」
きゃふふって楽しそうなヘチャン。ロンジュンは鼻をぐすぐす鳴らしてる。
ヤンヤンがくすくす笑い出すから何かと思ったら、テンの目の周りが真っ赤になってた。
「なんでテンが泣くんだよ、変なの」
「お前は真剣な雰囲気で笑い出す癖どうにかしなよ」
テンが目を細めてる。
ほんと、泣くほどのことでもないのに。
でもおかげでロンジュンがひひって笑いだして、泣き止んだ。
「それにヌナ、ヌナは勘違いしてるよ」
「勘違い？」
「ヌナはあの日、俺をお化け屋敷に置いていった後、ちゃんと俺を探しに戻ってきたじゃない」
マジ？ってマークが身を乗り出す。
「うん。ヌナは俺より泣いてたよ。俺を見つけて、手を引っ張って、一緒に出口まで連れて行ってくれた。出てきた俺とヌナがどっちも大泣きしてるから、ママがビックリして警察を呼ぶところだったんだから」
ねえママ、ってロンジュンが振り向くと、ママがにこにこしながら頷いてる。
「記憶を書き換えちゃうほど思い詰めてたんだ、ヌナ」
ヘチャンが肩を落として呟いた。
もー泣くなよ、ってジェヒョンがテンの肩を揺さぶってる。
「どんな時もヌナはヒーローだったし、俺たちの味方だったよ」
ロンジュンが涙を拭いて笑う。
その笑顔をマークがじっと見ていた。
なんとも不思議な空気に終わった朝食会だったけど、ママはかなり満足そうだった。私がこんなに沢山の友達を連れてきたのは初めてだったし。
ヘチャンとロンジュンの説得の元、私は外出解禁に。
こればっかりは素直に二人に感謝しなければならない、
ので、今度研究室のみんなと遠出する時に二人も連れて行こうってヤンヤンが言い出して、それに賛同した。
韓国に戻る前までの良い思い出作りにもなるはず。
私が研究者としての脳を失ったままの日々は続いた。
研究室でただ寝てるだけの置物と化した私を、研究室のみんなは追い払わず、私の穴を埋めようとしてくれた。
暇なのでテンの模型作りを手伝おうとしたら、本気でやめて、って真剣に言われてちょっとショックだったけど。
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
