◇Stupid friends◇ ページ1
味気ない病院食を食べて、また一晩寝てから、私は退院した。
助けた男の子たちとその親御さんが私のことを酷く心配していて、病院まで会いに来てくれた。
ラッキーは元気そうにしっぽを振ってる。
家で飼えずに、二人が橋の下でこっそり餌をやっていたワンちゃんらしい。
ラッキーと名付けたことを褒めておいた。
会計を済まして外に出た。
久しぶりの外の空気を吸い込む。
雨はすっかり上がって、夏らしい太陽が照りつけてる。
別の子供達がやってくる前に逃げ場所を探さないと。
病院の前に停まったバスから、見慣れた背格好の男の子が降りて来た。
肩にかけた鞄を背負い直して、左手には花束を握ってる。
こっちに歩いて来る途中で私に気付いて、立ち止まって、
数秒間固まって、
持ってた花束を足元に落として。
「A」
今にも泣き出しそうなマークが、私に駆け寄って、抱き締めた。
強く。優しく。
自分の頬に私の頭を押し付けて、小さく私の名前を呼んでいた。
「マーク…」
「具合は？もう歩いて平気なの？」
マークは私のおでこから首元までを順番に見て、
肩をゆっくりさすった。
「平気だよ、退院したの」
「起きたばっかりだろ？まだ寝てた方がいいんじゃ」
「一晩寝たよ」
マークは小さく首を横に振ると、
珍しく深刻そうな顔で、ため息をついた。
それからもう一度私を抱きしめる。
「心配した」
首筋からマークの匂いがした。
「…マーク…声が枯れてる」
「突然いなくなったから」
「…ごめん」
「本当にもう平気？」
「心配しすぎだよ」
マークはそっと私から離れた。
私の首の後ろをさすってる。
「目覚めたらその時すぐに連絡して欲しかった」
「…別に、病気になった訳でもないし」
「何言ってるんだよ…冷たい水に長い時間浸かったから、何日間も高熱を出し続けて…死ぬ所だった、分かってる？」
私に訴えるマークの目。
思わず、逸らしてしまった。
「辛かった」
「…」
「遠くに行って、もう帰ってこないのかと」
「…何言ってるの」
この数日意識がなかったし、記憶も飛んでる。
マークの言うことはあながち間違いじゃなかったかもしれなかった。
「どうしてあんな事を？」
マークは私から目を逸らさない。
「ロープが外れたのは私の不注意だったの」
「あんな流れの川に飛び込むなんてどうかしてる」
「マークだって飛び込んだでしょ？」
「黙って見てられると思う？」
「頼んでない」
思わず口走った。
マークの目を見つめるのを、初めて、躊躇った。
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作者名：ユン | 作成日時：2022年10月19日 8時
