君の五臓六腑まで愛してる (ページ6)

今日:16 hit、昨日:17 hit、合計:18,512 hit

2:「君に嫌われる方法」（YT）ページ6

「別れようかと思ってる」

＊

この話を誰かに相談しようと思った時、
一番に頭に浮かんだのが、高校の同級生である大崎将太郎だった。

「…え？誰と？」

彼氏とは共通の友人だし、頼りになると思ってたから。
いざ打ち明けてみたら目を見開いて聞き返されたけど。

「悠太くん。他に誰がいるの」
「え？…何で？…え？」

将太郎は動揺してる。
それから、くくん、って小さな咳払い。

「お互い就活も終わったし、悠太くん交えて久々に飲もうって言われたから、来てみたのに。そんな話から入るの？」

どうやら私がもう酔ってると思ってるらしい。

高校を卒業して早3年と少し。
進路が違った将太郎と会うのは久しぶりの事だった。

でも偶然お互い東京に居たし、
私の彼氏、悠太くんと将太郎は、小学校からの付き合いだった。
年上の悠太くんはもう社会に出ていて、今日の集まりも仕事で少し遅くなるって。

「本気だよ」
「…本気なんだ」

飲み込みが早い。

「理由は教えてくれるの？」
「うん。この間、初めて悠太くんの実家にお邪魔したんだけどね」

へえ、って興味があるふうに身を乗り出してくれる将太郎。

「でさ。分かるでしょ？悠太くんの実家って、凄く敷居が高いの」
「うん。大阪有数の名門だもんね」
「そう。親御さんだって、未来の姑になるかもと思って、気合い入れて会いに行ったんだけどさ……4人いたんだよ、姑」

母、祖母、曾祖母、そして高祖母の遺影。

「…一家まとめて住んでるからか…」

名門ゆえに。

「まとめてみんな悠太くんのこと可愛がってるからさ。なんか顔合わせた途端凄く睨まれてる気もしたし。親の職業とか実家の資産とか聞かれたし」
「あちゃー、プレッシャーだね」
「タイミングが悪いのか、その次の日、悠太くんの大学の同級生を名乗るお姉さんまで現れて」
「ええ？」

なに？ドラマ？ってくすくす笑ってる将太郎。笑いごとじゃない。

「ドラマみたいなこと言われたよ。あんた釣り合ってないよ、とか」

綺麗なお姉さんだった。それが事実だから尚更凹む。

「悠太くんが好きそうな服とかメイクとか気にしてたのも、他から見ればバレバレかなと思ったり」
「まあでも、悪いことじゃないよ、それは」
「元々背伸びするようなタイプじゃないの。悠太くんと付き合い始めてから、ずっと無理してきたような気がする」

うーん、って、頬杖をついた将太郎の目がぎゅっと細まる。

「だから、別れたいの？」
「憧れだけで恋愛する歳でもなくなってきたでしょ」

少なくとも、あの家の嫁にはなれない。