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「痛い？」
ヘチャンは私の頭を撫でる。
「平気だよ」
「痛いはずだよ、ばたーんって倒れたんだもん」
話聞いてくれない。
ヘチャンはがばっと立ち上がると、頬を伝う涙を手のひらで拭う。
「あの野球部絶対廃部にしてやる。未成年飲酒でも喫煙でもでっちあげて」
「やめてよ…」
A今度からヘルメット付きで登下校する？って、
私の手の甲をさすりながら、真面目な顔で言ってる。
数時間前とは別人みたい。
「それ！依存してんだよ！」っていうのも、
質問箱でユーザーに言われた言葉。
時折見せる優しさ。
いつも窮屈な思いをしてたことなんて忘れちゃう。
「…怒ってないの？」
呟いた。
私たち、大事な話をしてたような。
「どうして俺が？」
「…私の浮気を、疑って」
「気の毒なAに怒れるわけないでしょ。目を離してごめんね、俺を許して」
自分の頭をさする。
軽い脳しんとうを起こす程度の打撃。
それでも初めての痛みだった。
体育の授業でサッカーボールが飛んできた時は、ヘチャンが咄嗟に庇って、私の代わりにすっ転んだ。
面倒な生活指導の教師に捕まった時は、手を引いて一緒に逃げてくれた。
いつも守ってくれていたから。
「A」
伏せたその目を見る。
「補習で会えなかったから拗ねただけ。映画でも見に行こうか、きっと楽しいでしょ」
「…ヘチャナ、私が楽しくないだなんて言って…」
「いいよ、もっとAに好かれる努力をしないとって、ずっと前から思ってんだから」
ヘチャンは微笑んだ。
その数日後、たまたま縁があって、ヘチャンの中学時代の同級生に会った。
名前はジェノさん。
聞くとジェノさん曰く、
ヘチャンはある日、私に幼馴染の男の子がいることを知って、かなり落ち込んだらしい。
「幼馴染ごときで何で」
「どんなに愛された彼氏になろうと、揺るぎない一つの『地位』だからじゃ？」
小学生の頃引っ越ししたっきり、会ったりしてないけど。
ヘチャンが私を束縛するのは、その事実が原因じゃないかって。
ジェノさんがカンニングの話をし始めた時は驚いた。
私は他校の知り合いに会いに校舎へ入って、その時たまたま窓の外からヘチャンが見えたのに。
「何でって、ヘチャニの彼女に会ったら話の種にしようと思ってた。カンニングのことなら、同中の奴は全員知ってるよ。当時小テストの答えを盗み見に行く勇者ゲームが流行って、お調子者のヘチャンが立候補しただけ。失敗して、学年集会で怒られて、学校中の笑いもの」
正直、ただ君に好かれたいだけなんじゃないの、って、ジェノさんはにっこり笑った。
＊
続く
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作者名：ユン | 作成日時：2023年3月11日 21時
