君の五臓六腑まで愛してる (ページ26)

今日:9 hit、昨日:36 hit、合計:18,541 hit

6:「イヘチャンの憂鬱」（HC）ページ26

「なんでイAなの？」

＊

私の彼氏が、この高校生活を通して人に最も言われたであろう言葉だ。
たまに名前の前に「よりによって」が付け足されたりなんかして。

「A、帰ろうよ」

放課後になるとヘチャンは、わざわざ建物の違う校舎まで私を迎えに来ては、
優しく透き通るような声で名前を呼ぶ。

「あ…ごめん、今日補習で」

振り返って答えた。

「何時まで？」
「1時間くらい」
「じゃあ待ってるから」

にこって笑って、教室に入って来ると、
私が立ち上がって空いた私の席に座り込む。

「1時間で終わるかな？」

そう振り返るのはクラスメイトのチソン。

「ヘチャニヒョン、悪いことは言わないから帰った方がいいよ。中間数学、Aだけまた赤点だもん。担任が数学教師なのに。説教だけで何分過ぎるか」
「チソンア余計なこと言わないで」
「ヒョンは赤点知らずの優等生でしょ？ヤンキーAと付き合ってるの、なんだか不思議だよね」

「ヤンキーじゃないし…」

ぶつぶつ言いながら鞄に数学の教科書を詰める。

「Aは数学が苦手なだけで、勉強頑張ってるよ。赤点でも3点伸びたし」

ね、って私に微笑みかけるヘチャン。
やっさしい！って声を上げるチソン。

「俺毎日彼女のために補習待ってあげられる自身無いな。部活のマネージャーの子たちが、Aはヒョンを暴力で脅して無理やり付き合ってるんだって」

俺も一時期そうなのかと！って言ってる。
私がさっと拳を振り上げると、きゃ！って叫んで自分の頭を覆って楽しそうに笑った。この男はこれが楽しくてしきりにいじってくる。

「だとしたら、情けなさすぎでしょ、俺」

へチャンもそう笑った。

「まあ言わせておけばいいよ、知らない奴らが言うことなんて」
「さすがヒョン、A、こんな優しい彼氏後にも先にも現れないよ、大切にしなよ」

余計なお世話過ぎる。べーって舌を出した。
チソンの冗談にはほとほと嫌気がさすけど、あらかた嘘でもない。

1つ年上のヘチャンは成績優秀で、学年の首位独占者。
その上顔が良くて歌もうまい。友達がヘチャンのカラオケ映像をSNSにアップロードしてから、芸能事務所から絶えずスカウトが来ているくらい。
明るい性格で、話は面白くて、誰にでも親切。
言うまでもなく学校の人気者。

唯一の汚点といえば、喧嘩早くて、校則破りの常習犯で、
勉強させれば赤点まみれの、私みたいな彼女がいることくらいだった。

チソンの部活での噂だって、真実ではないけど、流れるに何の不思議もない。
今日の補習も、次こそ退学だと脅されて、嫌々行くことに。