5:「俺たちが別れる100の理由」（DY） ページ21
「もう無理だよ」
＊
1か月前、君は、この言葉を残して、私の元から去った。
同じ研究室の友達として出会って、2年半。
どこにでも居るような普通のカップルだったけど、その終わり方は、
あんまり良いものとは言えなかった。
お互い未練があったわけじゃないから、円満と言えば円満だけど、
徹底的に嫌いになって別れた訳でもない。
楽しかった思い出は確かに尾を引いている。
でも、まだ1か月。
忘れた頃に君を思い出すとか、それっぽい気持ちに浸れるまでは、まだもう少しかかりそうだ。
「あ」
「あ」
1か月ぶりにその顔を見た時、そんな思いが一瞬で頭をよぎった。
部屋着。眼鏡。ぼさぼさの髪。お互いが。
22時、行きつけのスーパー前で、私たちは偶然に会った。
「何でいるんだよ」
沈黙を最初に破ったのは相手だった。
無視されなかっただけ良かったって安堵が半分、なんで喧嘩腰なのって呆れが半分。
「来なきゃ飢えるからでしょ。そっちこそ。コンビニ行けば」
足を踏み出して店内に入る。
相手も負けじと入って来て、私の前に割り込んで、カゴを引っ張った。
「そっちが行けば」
子供みたい、って鼻から息を吐き出す。
昔、私たちがお互いの家に泊まる日は、よく2人で近所のここへ買い物に来ていた。
がさばらないようにまず乾麺から。
そう決めてた。
だから今私たちが、乾麺のゾーンに向かって並んで歩いてしまってるのも、不可抗力。
「着いてくるなよ」
そう隣で眉をひそめてる。
「着いてきてない」
負けじと言い返す。
もう閉店間近の店内は、乾麺コーナーにも空きが多かった。
普段食べてるお気に入りの5食入りが、残り1個。
はっと手を伸ばしたら、案の定、もうひとつの手もそれを掴んでた。
「…離して」
「俺の方が早かった」
「どう考えても私だった」
「こんな時間に食べる気？太るよ」
私をじろりと見るつり目。
悪意しか感じない。
「誰が今すぐ食べるって？」
手を離した。別れた途端性格悪くなるタイプだ。子供には付き合ってられない。
作戦変更、近くのお肉コーナーに向かう。
と言ってもラーメン以外にメニューを考えてなかったので、そのまま佇んでしまう。
後ろから白い腕がにゅっと伸びてきて、4枚入りのハムを取って行った。
「ちょっと、キムドヨン」
背中に声をかけた。
立ち止まって、振り返る、すっぴん眼鏡男。
「何だよ」
「見てたんだけど。わざとでしょ」
「何買うかは俺の自由だよ」
「ラーメンにハム入れる習慣なんて無かったじゃん」
ドヨンは目を細める。
「趣味が変わった」
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作者名：ユン | 作成日時：2023年3月11日 21時
