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でも普段は控えめで、ちょっとびびりで甘いもの好きな彼と、
付き合って結婚するなんてことは考えてなかったし。
今こうして、もうすぐ小学校に上がる子供をお母さんに預けて、
結婚記念日のディナーに行くことになるとは、もっと想定してない。
早い時期の妊娠だったから、産むことに対しての不安はあまりにも大きかった。
でも妊娠を告げた時、テヨンは子どもみたいにぼろぼろ泣いていた。
それを見て、このお腹の子とテヨンを、自分の人生の宝物にしようと決めた。
お腹にいる間、どうか赤ちゃんはテヨン似で産まれてきますようにって、
必死にお願いしてたけど、テヨンはそのたび大笑いしてた。
「でも結局俺に似たね、ママっ子だもんね」ってにこにこしてたけど。
そんなことも、振り返っては現実には思えない時がある。
「じゃあ聞くけど、Aが俺を好きになったのはいつの事なの？」
人気のない狭い路地。
テヨンは子供みたいに、バランスを取りながら縁石の上を歩いた。
「いつだったかな。多分大学の」
「まって、当てたい」
んーって唸ってる。
「あ、俺がコンサートのチケット当てたときでしょ。A超喜んでた」
「ちがーう」
「じゃあ内定のお祝いに高級中華ご馳走した時？」
「お手頃価格だって私に嘘ついたときね。でも違う」
「誕生日にあげた香水気に入ったとか？」
「物と金ばっかりだけど、私そんなにがめつく見える？」
「…じゃあAをナンパしてきたヤンキーに立ち向かって、守ってあげたときか…」
「無い記憶を捏造しないで」
喧嘩したことないくせに。
「もう意地悪しないで早く教えて」
ふん！って言ってる。当てたいって言ったの自分でしょ。
「私もはっきり覚えてないんだけどね。多分大学2年の秋くらい」
「直前だ」
「直前？」
「告白の返事貰う直前。俺大学入試の時告白して、返事返って来たのが2年の秋じゃん」
冷静に考えて、おそ！って言うから、少し笑った。
確かに悠長にしてた所はあったのかも。
でもある日のテヨンが、私の家で飲んではベロンベロンに酔って、まだ悠太が一番なのって頭抱えてたから。
そこでファンクラブは抜けることにした。
「本気で色々と考えてたはず」
「忘れてなかった？」
「なかったよ。キャンパスがイチョウの黄色でいっぱいになった頃でしょ」
大通りの真ん中を走るテヨンが、斜めに提げた鞄を揺らして、
立ち止まって、振り返る。
風に吹かれては、雪にみたいに落ちてくるイチョウの中で、ジャンプしながら笑ってた。
「それまで見た誰よりかっこよく笑う人に出会ったの」
＊
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作者名：ユン | 作成日時：2023年3月11日 21時
