君の五臓六腑まで愛してる (ページ19)

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食事を終えたら、川辺で優しい風に当たる。
ベンチに座ってたら、テヨンが自販機から買ってきたあったかいお茶を持って、後ろから現れる。

「A、今日のユタは校門の掃き掃除だ！昼休みの間に綺麗にしておこう」

駆け寄って来ながら高校生のマネ。
ふふって笑って、ペットボトルを受け取った。

結局レストランでも高校時代の思い出話ばかりしてしまった。

「確かにFCだなんて言い張ってたけど」
「ん？」

テヨンが隣に座る。

「悠太くんがもし私を好きになっても、傍にイテヨンさえいてくれてたら、私はテヨンイのこと好きになったはずだよ」

その顔を見た。高校の時から劣化のない二枚目。

「なにー、記念日だからっていいこと言おうとしてるでしょ」

って言いながら満更でもなさそうににやにやしてる。

「別の男追っかけてたのに、同業者と結婚するなんて思っても無かったもん」
「だから何なの、同業者って」
「悠太くんにも友達として好かれてたテヨンが、わざわざ私に付き合ってFCごっこする必要なんてないのに。私はテヨンイに感謝しなきゃいけないみたいでしょ」

テヨンがぱちぱち瞬き。

「やだな、もしかしてばれてる？」

気まずそうに少し俯いてる。
逆に高校の時全く気付けなかった私、ちょっとばかみたい。

サッカーの試合、その観客。

「Aの隣に座る前から、Aがどこに座ってるのか、背中を探してたよ」

テヨンが上着のジャケットを脱ぎながら言う。

「気になる子が友達のストー…大ファンしてる時の落胆、Aは一生知らないでしょ」

知らなくていいけど、って、私の肩にジャケットを被せた。
寒そうに鼻すすってる。

「一緒にストーカーすることにしたの、名案だね」
「勉強会も掃除の時間も必然的にA独り占めだよ」
「悠太くんの応援してるときのテヨン、演技には見えなかったけど」
「ユタを愛する気持ちはAに負けてなかったからね、実際」

「そんなことないもん」
「そんなこと言っていいの、旦那さんの前で」

テヨンが私の手を優しく握って、立ち上がる。

「せっかくだし寄り道する？まだお店も閉まってないだろうし」

鼻先の赤いその顔を見て、微笑んだ。

「ううん、帰るよ。なんかちびちゃんに会いたい気分」
「そっか、じゃあ帰ろう」

テヨンも微笑む。

私は、教室の隅っこから学校のアイドルをこっそり眺めている時、
雑用を人知れず代わる時、あわよくば本人に気付かれたいと思うよりも早く、
隣の男の子とボディーガードごっこをしてただ笑うことを、幸せに思ってた。