君の五臓六腑まで愛してる (ページ16)

今日:25 hit、昨日:17 hit、合計:18,521 hit

4:「悠太くんFC」（TY）ページ16

「A、彼のどんな所が好き？」

＊

高校時代のイテヨンは、こう言えば私が手を止めることを知っていて、
わざわざこういう意地悪を何度も言ってきた。

「まずちょうイケメン、である前に、声が綺麗だし言葉も優しいし女の子に意地悪しないし」

当時の私も俯いて言っているうちに、シャーペンを握る手が止まっていたり。

「運動神経いいし成績もいいのにそれを鼻にかけないし、困っている人は見捨てないし、紳士だし男らしく気前がいいし、笑うと」

ふと、目線を上げて、
目の前で私の顔を覗き込んでは、にやにやしてるイテヨンの両目を見て。

「かっこいいし」
「そっか」
「私に一日何回させれば気が済むの？この話」

目を細めて不満をあらわにする。
いひひ！って笑って、数学の教科書の上に頬杖つくイテヨン。

「でも、毎回楽しそうに話すじゃん。さすがおたく！」
「テヨンア私に課題進めてほしくないだけでしょ」
「Aスピード早すぎるんだもん」
「言ったんだからそっちも話してよ」

「うん？」
「悠太くんの好きなところ」

2人きりの休憩室に私の声が響く。
机の上に腕組をして、私をじっと見つめるイテヨン。

中本悠太は、うちの高校のアイドルだった。
さっき言ったように、非の打ち所がない人気者。

転校してきた時、道に迷っていたのを親切に助けてもらってから、私は悠太くんの大ファン。
雲の上の人で、軽率に話しかけることなんて一度もできなかったけど、教室一番後ろの席からひそかにその活躍…活躍？を、見守っていた。

今私と向か合わせで参考書を開くイテヨンも、白い肌に大きい両目が美少女みたいな、
かわいい学校のモテ男だったけど。

悠太くんのサッカーの試合の応援席で、
たまたま隣に座った男の子が、熱心に悠太くんばっかり応援していた。

最初は同業者かと警戒したけど、悠太くんの話で意気投合。
「同業者って何」。イテヨンはいつかの帰り道でそう笑ってた。

「俺に優しいところかなあ」

そう呟いてくすくす笑う。

「と見せかけてみんなにも優しいところ」

くっ、さすが分かってる。拳を握りしめたら、テヨンはまた笑った。

本来私が一緒にいるはずのないような、王子様のイテヨンと私が、
当時そうして一緒にいたのも、「中本ファンクラブ」の会員同士だったからだ。
FCは3年間ちゃんと非公式で、会員数も2人だったけど。ひっそりと活動していた。

「そんなことよりまず復習しようよ。期末でいい点とれなきゃ、来学期悠太くんと同じクラスに残れない」

だねえ、って間延びした声。テヨンは細いペンを指先でくるくる回した。