君の五臓六腑まで愛してる (ページ2)

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「マーク」

まーく、って小声で復唱するチョンロ。

「お母さんが来るのかと」
「学校の帰り道じゃん。荷物これだけで良かった？」

マークは鞄をベッドの脇に置くと、中からブランケットを取り出す。
片手で器用に私の膝の上に広げながら、もう片方の手で私のおでこに手を当てた。

「まだ熱あるね」

すぐに離れる指。
マークは背後の、チョンロのベッドに目をやると、すぐにシャっと仕切りのカーテンを閉めた。
あっという間に見えなくなるチョンロの姿。

「病室って男の人もいたっけ？」

マークがベッド脇の椅子に座る。

「まだ小児扱いだからね」
「声枯れてる。つらいでしょ」

そう言いながら、鞄からご飯のタッパーを取り出してる。
久しぶりにおばさんのご飯だ。スパイスのいい匂い。

魔法瓶から真っ白の湯気がもくもく立ち上る。

マークがその中にスプーンを突っ込んで、ぐるぐる回してる。

「…マーク、わざわざ来てくれなくても良かったのに。期末近いでしょ。荷物も自分で取りに行けたし」

スープの上に乗ったユッケジャン。
マークがふうって息を吹きかけると、湯気が真横に伸びた。

「口開けて」

言われるままに少し開けた。
流れ込むあったかいスープとごはん。

「自分で食べられるよ」

手を伸ばしたら避けられた。

「先生が、ゆっくり少しずつ食べるようにって」

言いながらまたすくって冷ましてる。
人がいつもがっついて食べてるような言い方しないで。

「マーク」

またスプーンが近づいてくる。噛んで飲み込む。
喉がひりひり痛いけど、おいしさには勝てない。

「ディベート大会の本選ももうすぐじゃん。準備しなくていいの」
「今日は普段より不満が多いんじゃない」

魔法瓶の中身を見つめて、かき混ぜてる。
探し出してすくうのは私の好きな白葱の欠片。

「落ち込むことないよ、数日で退院なんだから」

思わず、
その手のスプーンを取り上げて、魔法瓶の蓋も無理やり閉めた。

「いいから行ってきてよ。打合せ今日なんでしょ。私が落ちて、あなただけ本選に通った大会」
「A」
「辞退するなんて言わせないから」

布団を引っ張って、マークに背中を向けるように横になった。

「A、食べられるだけ食べないと」
「食欲ないの。持ち帰って」

マークはしばらくそこに居たみたいだけど、
ずっと窓の方を向いて眠ったふりをしてたら、そのうち病室を出て行った音がした。

立派な人だ。優秀な人だ。
幼馴染なことは幸運すぎるから、このまま一緒になればと周囲に言われ続けて。
一度は、自分だって立派になりたかったことを、忘れかけた。