1:「運命になりたい」（MK） ページ1
「あんたがオッパの彼女？」
＊
見ず知らずの女が突然目の前に立って、
そんなことを1日1回言われ続ける最高記録も、急な入院によって18日間で途絶えた。
思い返した。学校の女子生徒という女子生徒にはもう言われたし、
誰伝いに洩れたのか、知らない番号からの電話に出たら突然そう言われたこともあったし。
著しい異性人気のある男を幼馴染に持つと大変だ。
生きているだけで脅迫の対象になる。
「それで、彼女なの？」
2メートル離れたベッドから伸びて来る声。
数時間前に初めて会った、このルームメイトの名前はチョンロというらしい。
ルームっていうのは、病院の。
私は扁桃腺のちょっとした炎症で、彼はサッカーの試合で捻挫をして、数日入院することになった。
退屈だし悩み事話してよ、解決してあげる、実は俺その手のプロだから。なんて突然言われて、
退屈しのぎに、素直に打ち明けてみることにした。
「幼馴染だってば」
白い天上を見上げて呟く。
チョンロは寝っ転がりながら、お見舞いで誰かが置いてったカットりんごをしゃりしゃり食べてる。
あまり「その手のプロ」には見えない。
「許嫁の間違いじゃ？」
許嫁。
「その幼馴染、どんな奴なの？」
彼との出会いは、まだあんよし始めて間もない頃。
マンションの上下階に同時に住み始めた互いの両親。
うちの母は、当時の彼の大きな両目を見て、将来大物になると確信したらしい。
相手の母も母で、うちの母と本籍や誕生月や産婦人科のベッドが隣だったことを運命とまで思った。
彼が物心つく前から言い聞かせたのは、「上の階の女の子と一緒になりなさい」って。
私との将来を神さまに約束したとまで言われた。
彼と私は、彼が留学に行っていた数年間を除いては、文字通りずっと一緒にいた。
彼は恋心も知らないうちに、将来は当然私と一緒になるんだと思い込まされてきたし、
今も、将来Aと結婚するんだと同級生にからかわれて、彼は否定しない。
ひっきりなしにファンが私を訪ねるのも無理はない。
「母が自分の先見の明を確信したくらい、立派な人だよ」
へーん、ってチョンロの適当な相槌。
「そんな男と許嫁でよかったじゃん。知らない奴らに嫉妬されることの何が不都合なの？そんなことで悩むなんて贅沢じゃない？」
「悩みの相談に乗る気はあるの？ていうか、本題はこれからだし…」
その時病室の扉が開いて。
例の幼馴染がすたすた入ってきた。
れいの？って私の顔を覗いて、身体を起こすチョンロ。
「A、調子は？」
バスケットボールを小脇に抱えて、私の鞄を肩に背負っている。
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作者名：ユン | 作成日時：2023年3月11日 21時
