背中を押す手 ページ15
凛『それ…どうするんですか…？』
Aは封筒を鞄に戻す。
凛の小さな問いかけに返事を出来ずに、小さく口元を緩めるだけ。
凛『行くべきです…。』
突然そう言われてAは少し驚いた顔で凛を見た。
凛『まだ…好きなんですよね…？ドンヘくんの事…。』
Aは顔を歪めて視線を落とした。
凛『雪さんも書いてるじゃないですか！届く所にあるって！』
A『簡単に言わないで…。』
凛『どうして…？』
女優でいる時は…
積極的で…
強くて…
豪快で…
その背中にハラハラするくらいなのに…
自分の事になると…
急に弱くなってしまう…
A『私はそんなもんよ。』
軽く鼻で笑い飛ばすAは、飲み干したグラスを指でもて遊ぶ。
凛『待ってるだけでいいんですか…？』
A『…凛…。』
凛『ドンヘくんが来るのを…永遠に待ってるつもりですか！？』
少し声を大きくする凛を、周囲が振り返る。
凛『来ないなら行けばいいじゃないですか！会いたいなら行けばいいじゃないですか！』
そこに何の障害もないのに…
凛『踏み出さなきゃ…何も始りません…。』
珍しく興奮した口調の凛。
Aは通りかかるウェイトレスにビールのおかわりを頼む。
A『もう一年よ…。とっくに忘れてる…。』
無理矢理納得させるように言って笑う。
凛『行ってみないと分かりません！』
人って…
そんなに簡単じゃない…
心を焦がす程…
その人を愛したのなら…
涙で枕が濡れる程…
苦しんだのなら…
忘れられるはずがない…
その日の夜。
随分片付いた部屋の床でAはソファに寄りかかって膝を抱えていた。
韓国行きのチケットを眺めて思い出す凛の言葉。
"忘れられるはずがない…"
手を伸ばしてソファの上に放っておいた携帯を取る。
表示させるドンヘのメモリ。
通話のボタンが押せなくて、やっぱりソファに放りだした。
会いたい…
ドンヘ…
私はまだ…
簡単にあなたを思い出せる…
自分の身体を細い腕で抱き締めるように包んで、その腕に頭を乗せる。
"愛してるよ…"
そう囁くドンヘの声を思い出して目を閉じた。
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革ベルト
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潤羅(プロフ) - 前作といい今作も泣いてしまいましたTT (2012年7月15日 10時) (
レス) id: 4f8561ebe0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆちょみん
| 作成日時：2012年7月15日 8時
