重たい手首 ページ9
その頃。
随分遅れて姿を見せたA。
体調不良で倒れたと連絡を受けていたスタッフたちが心配していた。
まだ青白い顔色。
それでも精いっぱい笑顔を振りまく。
撮影真っ最中だったケンシ。
ニヤッと笑ってAをセットの中から見つめていた。
すぐに衣装が渡されて、メイクが付くと、アッと言う間に準備される女優の顔。
油断したらふらついてしまいそうな足をしっかり踏ん張ってセットに近づいて行く。
ケンシ『来ると思ってたよ。』
昨日の事を少しも悪びれた様子もなく、楽しそうに笑っているケンシを、Aは怖い顔で見つめた。
ケンシ『そんなゾクゾクする顔すんな。』
ケンシは近づいてAの耳元で囁く。
何も答えず黙ったままジッとセットを眺める。
ケンシはAの腰を抱き寄せた。
逃げられやしない…
お前はここでしか…
生きていけない事くらい…
俺には分かってる…
A『仕事よ。』
ケンシ『分かってるさ。』
Aとケンシは顔を見合わせた。
ケンシは軽く笑って先にセットに入る。
Aはドンヘのブレスレットを軽く出て撫でると、目を閉じて深呼吸する。
監督『行こうか！』
その声で一歩踏み出すと、凄いスピードで撮影が開始されていった。
3スタと言われても、勝手の分からない日本のスタジオ。
ドンヘはあっちこっち走り回って、3スタを探すのに手間取っていた。
体調が悪くても、顔色が悪くても、Aはサクサクシーンをこなしていく。
噛んでしまいそうな長いセリフも、難なくクリアしていた。
動くカメラが自分を捉えている感覚。
肌を焼く程のスポットが当たっている実感。
そこに間違いなくいる自分の中に沸き起こる安心感。
逆に、右腕のブレスレットがやけに重たい気がした。
少しの時間で、今日は撮影出来ないとあきらめていたシーンを撮り終える。
監督は満足そうな顔で頷いていた。
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆちょみん(プロフ) - >はるちょるさん いつもコメントありがとうございます＾＾ いやぁ…大げさですが嬉しいです/// (2012年7月15日 8時) (
レス) id: e0d8d6d975 (このIDを非表示/違反報告)
はるちょる(プロフ) - 感動感動です！本当ゆちょみんさんの作品は素敵です！大好きです！ドラマ化してほしいです^^できます！！！でも、自分役の人に嫉妬しちゃいますね(笑) (2012年7月15日 1時) (レス) id: 585b654a98 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - >うーたんさん いつもありがとうございます＾＾ アメブロの方が皆さんアクセスしやすければ戻してもいいのですが…。まだ続きますが、次回作も書いている最中です＾＾ (2012年7月15日 0時) (レス) id: e0d8d6d975 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - >みやもさん コメありがとうございます＾＾ 読んでくださって嬉しいです♪最後まで見守ってあげてくださいね！ (2012年7月14日 22時) (レス) id: e0d8d6d975 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - >まおさん 切ないのはゆちょみんのお得意コースですからｗｗ (2012年7月14日 22時) (レス) id: e0d8d6d975 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆちょみん
| 作成日時：2012年7月12日 10時
