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「あ、山田だ。お〜い!」
「えっ…?あ、なんだ。大ちゃんとひかか。二人ともまだ居たの?」
俺よりもだいぶ遅れて山田の存在に気付いたひかがひらひらと手を振りながらその名前を呼ぶとあっちも俺達を認識したらしく、パタパタと駆け寄ってくる。
不思議そうにこちらを見つめる自然に苦笑いしながら俺達も今終わったところなのだと言えば納得したように頷いた。
"今日"の帰り際に山田とすれ違うのはこれが初めてではなくて、実は下の階で違う雑誌の撮影をしていることも知っているけれどこうやって何も知らないふりをして偶然を装うのにもだいぶ慣れたと思う。
「山田はまだ終わんないの?」
「うん。もう1着あるんだよね、衣装」
「そっか…。これから大ちゃんとメシ行くから一緒にどうかなって思ったんだけど、」
そんなことを考えているとひかが山田を誘う流れになってしまい一瞬焦ったものの、まだまだ山田の撮影が終わらないことを思い出したため何も言わずに山田の返事を待つ。
今まで何度かメシに誘われた時に確か1時間ぐらい待っていたような気がするから今日は無理だろう。
ごめん、と申し訳なさそうな顔をする山田を特に気にする様子もなく"また今度な"と言ったひかにほっとしながら山田を見ればなぜか残念そうな顔をしていて、もしかして俺のこと誘おうとしてくれたのかな、なんて少しだけ嬉しくなってしまう。
だけど今回はダメ。
伊野ちゃんを応援するって決めたから。
山田も後から来ればいいじゃん、なんてうっかり口を滑らせてしまう前にひかの腕を掴み、そろそろ行こう?と目で合図をすれば3秒ほど見つめられたあと、首を傾げながら頷かれた。
え、これホントに大丈夫?
「んじゃ俺達そろそろ行くわ。残りも頑張れよ」
「ん、ありがと。ひかも大ちゃんもお疲れ様」
「おう。お先〜!」
絶対伝わっていないと思っていたのにそう言ってすたすたと歩き出してしまったひかに驚きながらも山田に手を振る。
どうせすぐにいなくなってしまうだろうけど、山田の中にはいつも笑顔の俺だけを残しておいて欲しいから。
「ひか待ってよ〜!てかどこ行くの?」
「え……?大ちゃんトイレ行きたいんじゃないの?」
慌ててひかを追いかけちょうど来たエレベーターに乗り込めば駐車場ではない階のボタン押され、やっぱりかと思う。
改めて何も伝わっていなかったことに苦笑いしながら"違うわ!"と返し、今度こそ駐車場の階のボタンを押した。
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やぶありLOVE(プロフ) - 更新お願いします! (2019年7月5日 5時) (レス) id: a774dd9b98 (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - ありさん» ありさん、はじめまして!コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい、申し訳ありません^^;訳あって暫く更新が停滞しておりましたが、これからまた少しずつ更新していけるかと思うので最後まで楽しみにしていただけると嬉しいです! (2018年9月4日 23時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
あり(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!これからの展開がとても楽しみです!更新頑張ってください´ω` (2018年8月16日 12時) (レス) id: 9b6fba23c4 (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん、こちらにもコメントありがとうございますー!!最後はちゃんとやまありになるのでご安心下さい(笑)今後も完結まで楽しんでいただければ幸いです(^_^) (2018年5月21日 20時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - ホシアイの方でコメントさせていただいた者です。こちらも、切なくなりながら、拝見させていただいてます。これからが、今後の展開が、とても気になっています。楽しみにしているので、頑張って下さい。 (2018年5月21日 15時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚夢 | 作成日時:2018年5月6日 23時