09:ar ページ10
｢電話？｣
｢あっ、うん。でも出なくて大丈夫なやつ｣
画面を見つめたまま固まっているとふいに山田の声が聞こえ、はっとする。
恐らく間違い電話だろうし、ここは何もせず自然に切れるのを待とう、と何事も無かったかのようにスマホをテーブルの上に置けばずっと考えないようにしていたあの人のことをすっかり思い出してしまい、なんとも言えない気持ちになる。
悲しくはない。
だだ、少し寂しいだけで。
｢大ちゃん……？｣
｢ごめん、ちょっと考え事してた｣
思わず出てしまったため息に怪訝そうな表情を浮かべこちらを見上げた山田に苦笑いをしながらまだ残っていたココアを飲み干せばいつかの味を思い出し、さらに憂鬱になる。
彼と過ごした3年という月日は決して短くはないはずなのに、あの人が俺に残してくれたものなんて何も無い。
だからこそこんな簡単大切な"思い出"を"過去"に出来てしまうことが寂しいのだ。
｢電話してくればいいじゃん｣
｢えっ……？！｣
そんなことを思っているといつの間にかパンケーキを食べ終わっていた山田にそう言われ、言葉に詰まる。
掛け直そうだなんてこれっぽっちも思わないけれど、これ以上怪しまれないためにもかけ直すふりぐらいはしておいた方が良いのかもしれない。
だけどこんな微妙な時間に一体誰に掛ければいいんだと考えているうちにだんだんと山田の表情が曇っていくのがわかった。
｢いつもそんなの気にしないくせに。電話、誰からだったの？俺には言えない相手？｣
｢別に……。お前には関係ない｣
どこかトゲのある言い方は紛れもなく俺のせいなのだろうけれど、流石に元恋人からとは言えない。
もういいだろ、と無理矢理話を終わらそうとすればあからさまにムッとした表情を浮かべ、"俺にも関係ある"と言ってきた山田にますます意味がわからなくなる。
今も昔も山田は大切なメンバーで、それ以上でもそれ以下でもないけれど、俺にだって誰にも言えないことぐらいあるのだ。
｢いや、ないだよ｣
｢あるよ｣
このままでは埒が明かないと仕方なく顔を上げ、無言で続きを促せばいつになく真剣な眼差しで見つめられ思わず身構える。
一体何を言われるのだろうか、と思いながらじっとその瞳を見つめ返せばやがてゆっくりとその口が動き始める。
｢ ｣
声は、聞こえなかった。
だけど唇は確かにその２文字を紡ごうとしていて、
気がつけば店を飛び出していた。
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柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん！ご無沙汰しております(^^)返信すごく遅くなってしまい申し訳ありません……！いつもコメント本当にありがとうございますっ。今年もたくさん書きたいと思っているので楽しみにしていただけると幸いです！今年もよろしくお願いしますm(_ _)m (2019年2月7日 1時) (
レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - 完結おめでとうございます。こんな感じのやまありも、大好きです。新作も、連載中のお話も、楽しみにしています。来年も、頑張って下さい。応援しています。 (2018年12月31日 20時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん！！いつもコメントありがとうございます(>_<)今までとは違うテイストのやまありが書きたくなってつい始めちゃいました(笑)こちらも楽しみして頂ければ幸いです(^^) (2018年11月12日 22時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - yuriaさん» yuriaさん、初めまして！コメントありがとうございます、柚夢と申します^^続きも頑張って書いていこうと思っているので最後までお付き合いして頂けると幸いです。今後もよろしくお願いします(>_<) (2018年11月12日 22時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - 新しいやまありのお話楽しみです。此方の方も頑張って下さい。 もう一つのやまありの続きも、楽しみにしています。 (2018年11月10日 21時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚夢 | 作成日時：2018年11月10日 20時
