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「いの……っ、」
「ラスト、二人ともカメラ目線お願いしまーす!」
耳元で囁かれた言葉にはっとして顔を上げれば伊野ちゃんはただ微笑むだけで、なにも言ってはくれなかった。
知らず知らずのうちに伸ばしかけていた腕をそっと下ろし、カメラマンさんにも伊野ちゃんにも見えない場所でぎゅっと掌を握りしめながら 必死に笑顔を作り、なんとか最後の1枚を取り終えると何事も無かったかのように話しかけてくる伊野ちゃんに少しだけ動揺してしまう。
果たして伊野ちゃんは俺になにを伝えたかったのだろう。
「お疲れ、大ちゃん」
「……伊野ちゃんもお疲れ様」
わからないけれど、きっと伊野ちゃんは教えてくれない。
だからあえて何も気付いていないフリをするしかないのだ。
「……で今度はホントに山田とかぁ…………」
「え、なんかごめん?」
本来であれば伊野ちゃんと行われるはずだった午後からの取材は、急な予定変更によって山田と行われることになり、少しだけ複雑な気持ちになる。
朝から伊野ちゃんに"山田とが良かった?"と言われ続けたからなのか、ちょっと今は他のメンバーが良かった。
なんて本人には言えないけれど、出来れば他のメンバーとが良かった。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「お願いします、」
そんなことを思っていてもいざ取材が始まってしまえば自然と口は開く。
いつものように他愛ないトークを挟みながら答えていると今回のテーマである恋愛についての話題に移っていた。
「───、ではもし彼女さんと喧嘩して、仕事と私、どっちが大事なの!?"なんて言われたらお二人共どう答えますか?」
「えっ!?えーっと。それは……、困りますね。どっちも大切だとは思うんですけど……」
「いや、山田はサラッと両方に決まってんじゃん、とか言うだろ」
どうしよう、と顔に書いてある山田に笑いながらそう言うとドヤ顔で"両方大切にします!"とインタビュアーさんに宣言していてここは絶対使われるだろうなぁなんてことを考えてしまう。
俺だって、仕事と同じぐらいあの人のことが好きだったのに。
大切にしていたはずなのに。
そうは思うけれど、心のどこかでそんな器用なことが出来る人間ではないことも最初からわかっていた。
「有岡さんはどうですか?」
「そうですね。俺は……、」
俺の"大切"を同じぐらい大切に思ってくれる人を探しているのだと思う。
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柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん!ご無沙汰しております(^^)返信すごく遅くなってしまい申し訳ありません……!いつもコメント本当にありがとうございますっ。今年もたくさん書きたいと思っているので楽しみにしていただけると幸いです!今年もよろしくお願いしますm(_ _)m (2019年2月7日 1時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - 完結おめでとうございます。こんな感じのやまありも、大好きです。新作も、連載中のお話も、楽しみにしています。来年も、頑張って下さい。応援しています。 (2018年12月31日 20時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん!!いつもコメントありがとうございます(>_<)今までとは違うテイストのやまありが書きたくなってつい始めちゃいました(笑)こちらも楽しみして頂ければ幸いです(^^) (2018年11月12日 22時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - yuriaさん» yuriaさん、初めまして!コメントありがとうございます、柚夢と申します^^続きも頑張って書いていこうと思っているので最後までお付き合いして頂けると幸いです。今後もよろしくお願いします(>_<) (2018年11月12日 22時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - 新しいやまありのお話楽しみです。此方の方も頑張って下さい。 もう一つのやまありの続きも、楽しみにしています。 (2018年11月10日 21時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚夢 | 作成日時:2018年11月10日 20時