君に恋した金曜日 ym×ar

18:ar ページ19

｢………………ふぅ、｣

｢お疲れ様、｣



今日は余計なことを考えないように楽屋に入る前から完全に仕事モードに切り替えていたせいか、時間が経つのがものすごく遅かった。
リハ中は黙々と自分の位置や振りを確認し、空き時間も特に誰も喋るわけでもなく一人で過ごしていたためカメラが回っている所以外でメンバーと話した覚えながなかったりするけれど、それはもうしょうがない。
自分でそれを選んだのだから。
ひとまず無事に収録が終わったことにほっとしながら廊下を歩いているといつの間にか隣を歩いていた山田に肩を叩かれた。



｢今日は珍しく大ちゃんが静かだってみんな心配してたよ｣

｢あー…、ごめん、｣

｢謝らなくて大丈夫だけど、｣



何かあったの？と心配そうにこちらを見つめる山田にお前のことだよとは言えず首を横に振ればそのまま会話が途切れてしまった。
前を歩いている薮ちゃんとひかはあんなにも楽しそうなのに、どうして俺達はお互い無言なのだろう。



やっぱり俺のせいかな。
心配してくれたのだから、もっと素直にありがとうと伝えれば良かった。



そう思っているうちに自然と口が動いていた。



｢あのさ、山田も今日はこれで終わりでしょ？一緒に帰ろうよ｣

｢えっ、いいの？｣

｢嫌なら誘わねぇし。ついでに飯でも行く？｣



可愛くないな、と自分でも思う。
だけどそれ以上に嬉しそうにしている山田を見て自然と緩みだした口元はきっと隠しきれていない。



｢ねぇ、大ちゃん｣

｢な、なんだよ｣



ふいに掴まれた腕に驚いて顔を上げると自然と目が合ってしまい、その真剣な表情に胸が高鳴ったのがわかる。



どうしよう。
こんなんじゃすぐにバレちゃう。



｢……やっぱり後ででいいや、｣



そう言ってすぐに手を離した山田にほっとしているとくすくすと余裕そうな笑みを浮かべられて少しだけムッとする。
俺の方が年上なのに。



｢……っ、なに！？｣



だから今度は俺が思いきり山田の腕を引っ張り、体勢を崩したところで口元を耳に寄せる。
あの時は逃げてしまったけれど、今なら言える気がするから。






"俺、山田のことが好きだよ"






ちゃんと伝わったかな。
届いたかな。




ド キドキしながら恐る恐るその顔を覗き込めば耳まで真っ赤にしている姿に少しだけ恥ずかしくなりながらも満足する。
やられっぱなしなんて性にあわない。









待たせてごめんね。
俺はずっと君に恋してたんだ。









END

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