君に恋した金曜日 ym×ar

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｢わかってはいる、けど……｣



自分に向けられているその感情が本当に"恋"なのかなんて、わからないじゃないか。
山田とはそれこそずっと一緒にいたし、今更話せないことは何もないと思っているけど、それでもやっぱりお互い踏み込めない一線はある。



｢今の大ちゃんに俺が言えることは、後悔だけはしないように、ってことだけだよ。答えは大ちゃんで出さないと｣



まるで心の奥まで見透かされているのではないか思うほどまっすぐな伊野ちゃんの瞳にこれ以上何も言えなくて、わかったと頷けばそれなら良し！と微笑まれた。



｢それじゃ、俺もう帰るね｣

｢へっ！？｣

｢だって俺明日も朝からロケだもん｣



お邪魔しました〜、と言ってさっさと家から出ていってしまった伊野ちゃんは文字通り"嵐"のようで、静まり返ったリビングが少しだけ寂しく感じるのは恐らく気の所為だろう。
気を紛らわせるためにテレビの電源を付ければ何度か共演したことのある芸人さん達が出ている番組が流れ、なんとなくチャンネルを変えるのを躊躇ってしまう。
まぁいいか、とリモコンをテーブルの上に置きつつソファーに座り直すとどっと疲れが押し寄せてきた。



｢…………はぁ、｣



思えば数日間のうちに色々ありすぎて、考えれば考えるほど頭がパンクしそうだ。
しばらくぼーっとしながらテレビを眺めているといつの間にか芸人さん達のトークの話題が恋人へのプレゼント選びについてになっていて、月初めに買ったあの人へ渡すつもりだったクリスマスプレゼントの存在をふいに思い出した。



そういえばあれ、どこにしまったけ……。



寝室……にはないはずだし、さっきクローゼットの中を開けた時にもなかった気がする。
あれっ？と思いながら立ち上がり、鍵などを入れている引き出しを上から順番に開けていくと紙袋に入ったままのそれを見つけ、捨ててはなかったことにほっとする。
これでもいつもより奮発して少しお高めのショップで買ったものなのだ。
使わないにしてもこのまま捨ててしまうのは勿体なさすぎる。
袋の中に入っている小さな箱を取り出し、丁寧に包装紙を剥がせば出てきたのはシルバーのシンプルなピアスで、思っていたものと違っているモノが入っていたことに思わず手が止まる。



｢え……、？｣



見覚えはなんとなくある。
最後までどちらにしようか迷っていたものだから。
だけどこれを選んだ覚えがなくて、キラキラと輝いているピアスを手に取り首を傾げた。

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