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「え、おかしくない?」
「えっ?」
そんなこんなで始まった収録は、俺と伊野ちゃんがこの前行ってきたロケのVTRからで、内容自体に問題はないけれど、オープニングからエンディングまでほとんど手を繋いでいたことに対しメンバー全員が困惑していた。
まぁいいか、とその時は特に何も思わず伊野ちゃんに手を引かれていたけれど、改めて映像で見るとなかなかに恥ずかしい。
だけどそれをスルーしてもらえるほどこのメンバーたちが優しくないことも知っている。
「そもそもなんで2人ともずっと手繋いでたの?カメラ回ってない所でもそうだったってスタッフさん達も言ってるじゃん」
「えー?大ちゃんの手温かかったし、いいかなぁって」
「そういう問題じゃねぇだろ」
相変わらずテキトーな伊野ちゃんの主張は珍しいことに薮ちゃんの鋭いツッコミによってばっさり切られ、そのまま自然な流れで次の話題へと移っていく。
結局この回はカメラの前で何度か相槌を打つだけでほとんど言葉を発することなく終わってしまい、逆に申し訳なくなる。
ただ声が出ないだけなのにここまで気を使われるとは思ってなかった。
「……ちゃ、」
「ほぇ?どうしたの?」
カットの声がスタジオ内に響き、全体的に張り詰めていた空気が少しずつ緩んでいくのを肌で感じながら隣にいる伊野ちゃんの服の裾を引っ張れば首を傾げながら顔を覗き込まれる。
言うならきっと今しかないだろう。
「俺、声、出るからっ!」
「……ちょっと待って」
自分では精一杯大きな声を出したつもりだったけれど、残念ながら伊野ちゃんの耳までは届かなかったらしい。
困ったように笑いながら"ごめんね"と言った伊野ちゃんはそのまま何処かへ行ってしまい、これはもうどうにもならないヤツだとため息をついているとふわりと伊野ちゃんのものではない香水の匂いが隣から香ってきた。
あれっ?と思い顔を上げるとなぜか先程まで伊野ちゃんがいた場所に山田が座っていて、いつの間にか入れ替わっていた2人に驚いているとじっとこちらを見つめたまま山田が口を開いた。
「突然伊野尾ちゃんに場所変わってって言われたんだけど、……何かあった?」
思い当たることは何も無くて、これはきっと山田の隣ならば俺が勝手に喋り出すこともないだろうという伊野ちゃんの策略だろう。
こういう時ばかり頭の切れる伊野ちゃんに項垂れながら首を振ればその意図に気付いたらしい山田にも苦笑いされた。
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柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん!ご無沙汰しております(^^)返信すごく遅くなってしまい申し訳ありません……!いつもコメント本当にありがとうございますっ。今年もたくさん書きたいと思っているので楽しみにしていただけると幸いです!今年もよろしくお願いしますm(_ _)m (2019年2月7日 1時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - 完結おめでとうございます。こんな感じのやまありも、大好きです。新作も、連載中のお話も、楽しみにしています。来年も、頑張って下さい。応援しています。 (2018年12月31日 20時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - やまありラブラブさん» やまありラブラブさん!!いつもコメントありがとうございます(>_<)今までとは違うテイストのやまありが書きたくなってつい始めちゃいました(笑)こちらも楽しみして頂ければ幸いです(^^) (2018年11月12日 22時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
柚夢(プロフ) - yuriaさん» yuriaさん、初めまして!コメントありがとうございます、柚夢と申します^^続きも頑張って書いていこうと思っているので最後までお付き合いして頂けると幸いです。今後もよろしくお願いします(>_<) (2018年11月12日 22時) (レス) id: e7612f0310 (このIDを非表示/違反報告)
やまありラブラブ(プロフ) - 新しいやまありのお話楽しみです。此方の方も頑張って下さい。 もう一つのやまありの続きも、楽しみにしています。 (2018年11月10日 21時) (レス) id: 556ce3724e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚夢 | 作成日時:2018年11月10日 20時