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「お待たせ、」
「……よし、じゃあ行こうか」
ひとまず大ちゃんには俺の服を着てもらうことにして、適当に選んだそれらとさっき一緒に買ってきた葵くんの服を大ちゃんに渡し、2人の支度が整うのを待っていると30分もしないうちに寝室から出てきた。
大人しく抱かれている葵くんの気分が変わらないうちに家を出て車に乗り込めば昨日まではなかったチャイルドシートが設置されていることに気付いた大ちゃんが驚いたようにこちらを見つめてきて嬉しくなる。
サプライズが成功した時みたいな、そんな気持ちだ。
「えっ、なんで……」
「いや、流石に昨日は仕方がないにしても子供を乗せる以上これは必要でしょ」
本人は嫌がるかもしれないけど、とバックミラー越しに葵くんを見てみるとすぐ隣に大ちゃんがいるからなのか特に嫌がることなくチャイルドシートに座っていてほっとする。
大泣きしたり、なかなか座りたがらない子供もいるとネットには書いてあったため少し心配していたけれど、どうやらそれは杞憂だったらしい。
「あ、そうだ。何か先に買っておきたいものとかある?葵くん関連のものとか俺よくわかんないからさ、」
「えっと……。今のところなんもない……と思う」
「ん、了解」
それならまずは服だな、と目的地をいつものショップに決め車を走らせていると信号が赤に変わったタイミングで話しかけられた。
「ねぇ。あれって山田?本人……?」
「えっ?」
運転席と助手席の間からひょっこり顔を覗かせた大ちゃんがそう言って指さしたのは目の前にある大きな広告塔で、そこには確かに俺が映っていた。
普段そういうものをあまり意識して見ないようにしている分、CMでもお馴染みの調味料を片手にこちらに向かい微笑んでいる自分の姿に気恥しさを感じつつ頷けば今までで一番驚いた声をあげられつい苦笑いしてしまう。
「え、山田って芸能人なの……?えっ?どういうこと……?」
「ふふっ。実は俺、アイドルなの」
広告塔と目の前にいる俺を何度も見比べている大ちゃんに"驚いた?"と笑いながら話しかけると何度も首を縦に振られ、つい口元が緩む。
そんな反応をされたのは久しぶりだ。
「山田ってやっぱり凄い人だったんだ」
「凄い?どこが?」
「全部」
俺とは大違いだ。
いつの間にか眠ってしまった葵くんの頭をそっと撫でながら寂しそうにそんなことを呟いた大ちゃんに俺はなんと返せば良かったのだろう。
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のん - はじめまして! 小説拝見しました! とっても心温まるお話ですね!そしてとってもキュンキュンします! 次回の更新を心よりお待ちしております! (2021年4月13日 17時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚夢 | 作成日時:2019年1月23日 21時