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■過去

産まれた頃からずっと彼女の中にいるアザミの呪いは、彼女の人生に大きな影響を及ぼし、彼女を苦しませるものであった。


彼女の両親は、アザミの花言葉を知らない。
いや、知っているのかもしれないが、意識はしなかった。
親として、花言葉だけで大切な娘を決めつけるような、そんな酷い扱いなどできるわけがなかった。
彼女はこんなにも優しく、可愛いというのに、蝕花病とはなんとも恐ろしい。
彼女の両親は、蝕花病を持っていたとしても何も思わず、彼女を愛した。

小学校の頃、彼女は優しい女の子だった。
いつも誰かの幸せを願えるような、そんな優しい子。
しかし、そんな彼女を、周りは酷く嫌った。
アザミの花言葉は、そんな彼女には不釣合いな意味である。
裏ではきっとこう思っている、きっとそんなこと考えながら話してくるんだ、本当はこんな目で見ているんだ。
陰口は彼女の耳に届く、まるで直接言われているかのように。
それは彼女には酷く辛く、トラウマになってしまうほど恐ろしいことだった。
自分はそんなこと全く思っていないのに、自分のせいで周りは嫌な思いをする、自分が何かをすれば相手は傷つく。
私はただ、皆と一緒に──

……そうなるのであれば、最初からそんなことをしなければいい。

そうすれば、自分も相手も苦しくないはず、そのはずだ、そうでなければいけない。
だから、"触れないで"、私に関わらないで。
自分思いに蓋をして、彼女は相手に心を閉ざしてきた。

中学の頃、彼女はそれゆえに孤立していた。
"彼"と出会う前の彼女は、この時からだった。
人との関わりを避け、遠ざけるように接する。
もちろん人から好かれるような人物では無い。
気がつけば、彼女の周りに人はいなかった。
もちろん友人などいない、それでいい。

……本当に、それでいい?
本当は、自分のことを、誰かにわかって欲しくて。
誰かが、こんな私を認めてくれて、救ってくれることを願っているのではないのだろうか。
ああ、まただ、はやく抑えなければ。
一度考えてしまえば、その思いははとどまることを知らない。
こんなことばかり考えては、心が持たない。


必死に抑えてるの、だからお願い。
私の心に"触れないで"。
辛いという思いが、どうしても零れてしまうから。

……


そんな彼女が、今こうして少しづつ心を開いてくれるようになったことは、彼女が少しづつ過去を乗り越えている証なのかもしれない。

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作者名:渡邊 | 作者ホームページ:ーーーーー  
作成日時:2023年11月12日 12時

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