秘めた想い (ページ49)

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「 …那須…？どうかした？」

『あっ、、いや…ちょっと考え事してて…悪い。』

「井上先輩、先月、編入して来たんだって。知ってた？」

『うん… 知ってる。』

「なんだ、やっぱり知ってたんだ。だったら教えてくれたら良かったのに。」

『別に… 俺もお前も知り合いだったわけでもないんだし、教える必要ないだろ。』

「えー、それはそうだけど… 俺、憧れてたから、あんなに近くで話せて嬉しかったなぁ。お前だって憧れてたんじゃない？」

『は？俺は別に。』

確かに…あの頃の井上瑞稀は、品行方正で凛としていて、生徒達の憧れの存在だった。

中学時代は、話したこともなかったし、遠くから見ているだけだったな…

学年も違うし接点もなかったから。

話してみたいとは思ってたけど…そんな勇気もなくて。

まさか、再び出会うことになるなんて…思ってもみなかった。

あの頃と変わらない姿に…
内心、胸が高鳴った。

だけど…素直になれなくて。

先輩もこれまで色々なことがあって、苦労してきたみたいで…

どことなく影が差している気がした。

俺も…何も知らなかったあの頃とは、何もかもが変わった。

お母さんが亡くなってから…

俺を取り巻く環境は、目まぐるしく変化してしまったんだ。