・ ページ18
・
いよいよかと思えば、妙に緊張感が漂ってきて呼吸が浅くなっていく気がした。
「大丈夫か爆豪？」
「……大丈夫だわ」
上鳴に痩せ我慢の返事をするが、大丈夫じゃ無いことが上鳴に伝わったのかもしれない。
苦笑いをした上鳴が「らしくない面すんなよー」と明るく笑い飛ばし、俺の背中を強めに叩く。
「成功させようね」
耳郎の言葉に、俺は力強く頷く。そしてスライドショーが終わったと同時に、俺はドラムの一音を鳴らした。
上鳴がチョイスした、卒業シーズンのバンド曲。今回もボーカルは耳郎だが、俺はハモりで幾らか歌うことになっていた。
この後に待ち受けているプロポーズを考えると、どうにも緊張で音を外しそうになる。しかしドラムから顔を上げて、目の前で楽しんでいるAを見たら、そんな緊張もほぐれていくのだった。
長かったようにも感じる一瞬のあと、切島が俺の場所だけ明かりを付ける。そして耳郎と八百万がゆっくりとリズムを刻み始める。
「A」
「え！？ は、はい！」
「Aちゃん立って」
Aの隣にいた葉隠がアシストして、Aは立ち上がる。それを見計らった切島が、Aの辺りの明かりを付けた。
まるでこの空間に俺ら二人しか居ないような錯覚を感じながら、高校三年間の思い出に浸る。その思い出の至る所にAがいて、Aは俺のそばで笑っていた。
俺はこれから先も、やっぱりAと一緒にいたい。
切島とタイミングを合わせながら、Aの元へ足を運ぶ。それから震える右手で、ポケットに入れていた指輪のケースを取り出すと、Aが小さく息を呑んだ。
何度も脳内でシミュレーションをしたのを思い返しながら、ケースの蓋を開く。迷いに迷ってダイヤモンドの指輪を選んだのは、耳郎と八百万に頼んだ事前リサーチを参考にしたものだった。
そして俺は、もう一度「A」と名前を呼ぶ。泣き出したAが、震える声で返事をした。
「……俺と、結婚してください」
「…………っ、はい」
Aと過ごせる残りの二年。その刹那を大切にすると誓って、左手の薬指にリングを通した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 923人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せいの - ご馳走様でした。。。。 キュンキュンした。。。。あーーー、すきィィィ！！！感情輸入し過ぎるくらいした。。。。あーーん 読み終わった後の心地よさが最高。心地良すぎて言葉にできへん 端的に言うとすきです。 (2022年3月28日 1時) (
レス) @page40 id: 9e2c3376df (このIDを非表示/違反報告)
ひゅうが(プロフ) - この話を見つけて数時間かけてですが全話読ませていただきました。萌えすぎて暴れたり、キュンキュンしまくったり…最後は爆豪くんの成長や、夢主ちゃんの最後などなどを見て泣きました。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年8月26日 21時) (レス) id: 36c4c30ff3 (このIDを非表示/違反報告)
華々宮(プロフ) - とぎさん» コメントありがとうございます。遅い時間まで読んで頂けて凄く嬉しいです。返信が遅くなってしまい今更かとは思いますが、ゆっくり休んでくださいね！ 泣けると言っていただけて本当に嬉しいです、こちらこそありがとうございました！ (2021年8月21日 22時) (レス) id: 97c93646fa (このIDを非表示/違反報告)
とぎ(プロフ) - こんな時間にごめんさい。昨日からずっと寝ずに読み続けて今全シリーズ読み終わりました。久しぶりにとても泣ける作品で良かったです。水澄ちゃんらの心情にもとても泣きました。とてもいい作品を読ませてくださりありがとうございました。お疲れ様でした！ (2021年8月20日 4時) (レス) id: 9d85423f3d (このIDを非表示/違反報告)
華々宮(プロフ) - 結城さん» コメントありがとうございます。感動したと言っていただけて嬉しいです、こちらこそありがとうございました！ (2021年8月17日 11時) (レス) id: 97c93646fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華々宮 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kgmy_novel/
作成日時：2021年7月11日 11時
