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「ふーん、おめでとさん」
大学内のカフェで、水族館で撮ったツーショットを見ながら水上颯は言った。
「いやー見事なキューピッド役お疲れ様です」
「我ながらナイス立ち回りだったでしょ」
口から歯を覗かせてニヒルに笑う。
そもそも彼は、私が気になっている相手が伊沢さんで、伊沢さんが気になってる相手が私ということをずっと前から知っていたらしい。
初めはほっとくつもりだったけど、目の前で拗れていくのが見てられなくて思わず手を貸してしまったそうだ。
「本当に世話の焼ける」
「ごめんごめん、はいこれ過去問と先輩のレポート」
「ん。さんきゅ。」
颯には試験前に勉強を教えてもらう代わりに私は情報提供をする。酒を飲みたい颯に付き合うために、私は愚痴を聞いてもらう。
持ちつ持たれつの同期。私はこの関係が結構気に入ってる。
サクッとタルトをきりわけながら彼は眉を寄せてため息をついた。
「どしたの?」
「おれ、お前との関係性気に入ってたんだけどな」
一瞬息がつまる。
「なにそれ、なんで過去形なの?」
「………」
普段は眠たそうにしている彼の目とまっすぐに目が合う。
「もう二人っきりで飲みに、とか行けないねって」
「え…」
そっか。そういえば考えたことなかった。
伊沢さんと付き合ってるのに他の誰かと二人っきりで夜通し飲むのは、健全ではない。
でも、気心の知れた颯なら…
「俺なら大丈夫だろとか思ってないだろうな」
ギクリとする。
さすが水上颯。
図星なわたしを見て不機嫌そうに顔を歪めた。
そんな顔を見ると、流石にわたしも反省する。確かに軽率な考えだった。
「ごめんね、私たちは全然大丈夫でも伊沢さんが大丈夫じゃないよね...」
「あー違う。そうじゃなくて…」
彼は急に俯いて、手元の時計を見て立ち上がった。
「もう時間だからいいや、また講義でね」
そのまま荷物をまとめていつも通り颯爽と出て行こうとする颯を慌てて追いかける
「ねえ、どうしたの?!気に触ること言ったなら謝るから…」
「…」
しばらく後を追いかけていると、人気の少ない場所で彼は何も言わずに振り返った。
突然止まるのでぶつかりそうになる。
息を切らして見た颯の顔は少し悲し気に見えた。
「一度しか言わないよ」
耳に顔が寄る。
吐息のように囁かれた。
「俺が、大丈夫じゃないの」
あとは自分で考えろ、と強い視線で言われた気がした。
夏の蒸し暑い空気の中、私は立ち尽くした。
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Å - 面白いです!。お話のつづき楽しみに待ってます! (2018年11月3日 21時) (レス) id: eec85e62da (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年11月1日 7時) (レス) id: 90f88fea4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふすま粉 | 作成日時:2018年11月1日 3時