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「なにこの焼き鳥」
「ありえんうまくないですか?」
「ありえんうまいよ」
颯がいなくなったタイミングで、私と伊沢さんは二軒目へ進んだ。
私が見つけた隠れ家絶品焼き鳥のお店。
絶品なのに安い。酒の種類も豊富。
颯と行ったときにはここは桃源郷だと評され、二次会ではよく訪れるようになった。
「これみてよ、ホーム画面にしたいぐらい美味しそう」
伊沢さんは嬉しそうにトロトロ卵のつくねの写メを撮っている。
にやけ顔が可愛い。幸せだ。
と、突然徳利がどんっとテーブルに置かれた。
顔を上げると頭にタオルを巻いた大将が笑っている。
「お姉さんまた来てくれたからこれサービスね !」
と、皿いっぱいの手羽先も渡された。
うおおっと嬉しそうに声を上げる伊沢さん。私もテンションが高まる。
「理子ちゃんすごい常連さんなんだね」
「ええ、颯と二次会するなら大体ここです」
日本酒を伊沢さんのお猪口に注ぎながらそう答えると、なるほどねと言われた。
何度目かの乾杯。
ぐいっと飲んでみると口当たりが水のようにまろやかで飲みやすい。飲み込んだ後の後味は思いのほか辛口。それからキューーッと熱が上がってくる。
これは美味しいお酒だ。
「やっぱいい顔するね」
いつのまにか飲み終えた伊沢さんに見つめられていた。今日だけで6回ぐらいそう言われている。
アルコールが回るように熱が顔に集まる。
「そんなに言っても何も出ませんよ」
「なにそれ、そのいい顔見られるだけで俺は満足なんだけど」
少し気障っぽいそのセリフが様になっていて色気を感じる。
やっぱり好きだ。
幸せだ。
体中にぶわっと熱が広がった。
「ほっぺた赤いよ」
狭い居酒屋のテーブルだから、伸ばされた手で簡単に頬を撫でられた。
それには少し驚いたけど、高揚した気分のまま、その手にじゃれて撫でられてみた。
安心する
広くて熱くなった掌が気持ちいい。
伊沢さんはお酒に強そうだけど、少しは酔っているのだろうか。
「ねえ、あのさ」
「はい」
わたしを撫でながら伊沢さんはいう。
「理子ちゃんって水上のことが好きなの?」
「はい?」
あからさまに驚いた顔をしたのが自分でわかった。
それをみてぷっと吹き出される
「すごい、すぐ表情変わった」
「いや、だってありえないですもんそれ」
「そーなの?」
「そういう対象じゃないんですよ、お互いに飲み友です」
「そっか」
するりと唇を撫でて、伊沢さんは笑わずに言った。
「よかった」
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Å - 面白いです!。お話のつづき楽しみに待ってます! (2018年11月3日 21時) (レス) id: eec85e62da (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年11月1日 7時) (レス) id: 90f88fea4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふすま粉 | 作成日時:2018年11月1日 3時