四十八 ページ49
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キルアは私の事を好いていないのだから、完治しないのは当たり前だろう。
『なんで…
なんで、恋なんかしちゃったんだろう』
手を洗って口を濯ぎ、トイレから出て歩きながらそう呟く。
ドンッ
「『うわっ』」
曲がり角が死角になっていたせいで、人が歩いてきている事に気付けなかった。
私はすぐに立ち上がり、その人に手を差し伸べた。
……が、私の視界に映ったのは予想外の人物で。
『キルアっ⁉』「A⁉」
同時に名前を呼び、目を大きく見開く私達。
キルア「あ……
……さっきは、ゴメン
つい勢いに乗って言い過ぎちまって…」
『…‼いや、その…私が勝手な事言ったから……』
このまま普段の私達に元通り
そう思っていた私が、甘かった。
キルア「あの時の返事だけどさ…
お前のことは嫌いじゃねえよ。
けど………
やっぱり、ダメなんだ」
『……』
キルア「お前が俺を不幸にするからじゃない
俺が、お前を傷つけるから
そんな俺は、
お前の事を好きでいる資格さえ持ってないんだ」
言葉が出なかった。
花吐き病の完治とか、そんなのどうでもよくて。
ただ単に、キルアにフラれた事に対して……悲しみを隠せなかった。
キルア「その眼……俺が、やったんだよな」
キルアは私の頰に手を添え、眼帯に優しく触れた。
キルア「俺達……
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出会わなきゃよかったな」
キルアはそう言って、切なそうに私の頭を撫でた。
そんなこと言うなら……なんで、そんなに辛そうなの?
"出会わなきゃよかったな"
その言葉だけが、私の脳内に響く。
私は目を見開いたまま固まり、キルアを見上げた。
キルア「…‼
A……ッ」
私の目は、大量の涙で潤んでいて。
水が溜まりに溜まった器から溢れ出るように、一粒、二粒と零れ落ちた。
キルア「俺…本当は…………っ
…………ごめん」
キルアの太陽になれなかった
キルアの心の支えになれなかった
キルアの……想い人に、なれなかった
どこまでも暗く、闇深い感情が私の頭の中をグルグルと渦巻く。
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しゃーぺん@彩(プロフ) - ももさん» ありがとうございます!幸福と不幸に比べ、この作品は結構短めになりますので、この作品が終わり次第幸福と不幸の短編集作成を考えています!もしよければそちらの方も宜しくお願い致します! (2019年5月30日 23時) (レス) id: 0a0b323a42 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 幸福と不幸から見てます!今回の作品も本当に良くて毎日毎日楽しみにしてます!! (2019年5月30日 18時) (レス) id: ed24bd7751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃーぺん@彩 | 作成日時:2019年5月15日 23時