第二十五話Δ ページ6
ーー京都、鞍馬寺。
鬼が出たということを聞きつけて来たものの、それらしい情報は全く得られなかった。
それに私は、蛇屋敷のことが頭から離れなかった。自分がいないうちにそういう関係になっていたらどうしよう、と。
「…」
こみ上げる怒りを噛み殺していると、「もし、そこの方」と声を掛けられた。
「鞍馬寺は初めてですか?」
「は、はい」
「もし良ければ少し離れたところに貴船神社というところがあるので立ち寄ってみてください」
寺に通っているのに、他のところ…ましてや神道の方を勧めるのは良いのだろうか。少なくともあまり宜しくはないだろう。
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げ、これ以上ここにいても情報は出ないと思ったので、大人しく言われた通り貴船神社とやらに行くことにした。
*
貴船神社は有名な神社らしい。水神を祭っており、読み方も「キブネ」だと濁音として濁ってしまう為「キフネ」となっている。
「…」
手水をし、道の端を通るように歩いて賽銭を入れてから二礼二拍手をした。
鬼殺隊庚の隊士です、と心の中で名乗ってから少し考える。
ーー良縁…師範との縁?でも、師範には甘露寺様が……。
頭の中で二人の顔が浮かぶ。師範が浮かんでは胸が痛み、甘露寺様が浮かんでは別の意味で酷く胸が痛んだ。
*
「数百年経っても変わらずか」
不意に、男とも女とも見分けのつかない声がした。ハッとして目を開けると、目の前に賽銭箱は無く、代わりに朱色の鳥居がどこまでも続いている。
「…ここ、どこ…?」
「本当に…哀れだな」
抑揚のない声。今、私に話しかけているのは人間ではないのだろう。鬼でもない。もっと、高位の存在ーー
「よく聞け、蛭愛。前は二十一日だったが…今は鬼と深く関わっているからそんなに長くいる必要もない。一週間だ。一週間、その隊服を脱いで宇治川に浸れ」
ーー隊服を脱いで川に浸れ?どういう意味が…。
「一週間川に浸れば、お前の望むように進むはずだ」
「!」
「少し荒治療だが……前と変わらないだろう」
声の主は姿を見せはしないものの、どこか懐かしむような声色だった。まるで、旧友に会ったかのように。
「もう行け。良いか、一週間だ。この機会を逃したら私はもう知らん」
「は…はい」
姿の見えない声は本当に私を懐かしんでいるようだ。しかし、同時に……どこか、悲しそうな雰囲気だった。
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茜(プロフ) - 凪さん» 読んで下さりありがとうございます!キメツ学園時空で結ばれることを祈りましょう…! (2020年2月3日 23時) (レス) id: 864d8b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
凪 - ほんとに面白かったです、でも少しだけ悲しいなあってなりました。来世では結ばれて欲しいです (2020年2月3日 23時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - くまっ子さん» わーありがとうございます!!(*´ω`*)楽しんでいただけたなら嬉しいです! (2020年1月4日 23時) (レス) id: 864d8b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
くまっ子(プロフ) - 全部読みました!こういったお話は個人的に大好きなのでのめり込んでその日全て読んでしまいました!次の作品も楽しみにしてます(^^)お疲れ様でした(*´∇`*) (2020年1月4日 22時) (レス) id: 8aff784c04 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 澪桜さん» ありがとうございます!本誌の更新速度によって本編を進めていこうと思ってます(´∀`) (2019年11月13日 17時) (レス) id: 864d8b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茜 | 作成日時:2019年10月7日 18時