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第三十四話 ページ15

俺は腹を押さえて立ち上がった。


ーー腹立たしい。下らない。


橋波の姿をした鬼に屠られるのも、俺の知らないところでアイツが追い詰められていてそれを言わなかったことも、全てに対して腸が煮えくりかえる。


話が通じないことは身をもって理解した。この鬼と話すことは何もない。ならただ頸を斬るのみだ。


ーー……だが、それでも、例え鬼だとしても、継子の頸を落とすことなど出来るのだろうか?どこかで俺は、迷ってしまうのじゃないだろうか?



「…俺は……」


少しの迷いを見せた一瞬。


鬼は腕を振るい、その鋭い爪で俺の首をかっ切ろうとした。


流石に二回目ともなれば体は反応し、余裕を持って避ける。しかし、跳ね避けて着地した瞬間、また蹴りを入れようとしてきた。


「どうしたんです?鬼狩りなら、その刀を使って私を斬ればいいでしょう?」


殴る、蹴る、殴るとみせかけて爪で引き裂く、などの騙し討ちを間髪入れずに繰り出す。明らかに身体能力は桁違いなものとなっており、多少強引な関節の使い方をしても負担にはなっていないらしい。


「…理由がどうであれ、お前が鬼になってしまった要因は俺にも一理ある。なら、俺がトドメを刺してやる。それが、今や鬼と成り果ててしまった、継子であるお前に出来る唯一のことだ」


攻撃を避け、振りかぶりが大きかった為よろけたその背中を蹴り、転倒した隙を見て呼吸を使った。


ーー蛇の呼吸、



「やめて!」



甲高い女の声。


汚れることも気にせずその長い三つ編みが乱れ、柔く桜色の刀身が生気の無い蛇のように地面にしな垂れ、若草色の怯えた瞳からは涙が溢れ、俺を見つめている。


「かん、ろじ………」


手から力が抜け、刀を落としそうになった。


勿論その隙を見逃さず、甘露寺の姿をした奴は俺に足を掛け、崩れたところを更に一押しして、橋の上に押し倒した。


「案外脆いものですね?」


「…お前の、術か」


「まだ上手く使いこなせないんですけど、一度成功すれば充分でしょう?」


ーーコイツは、アイツじゃない。俺の継子ではない。その姿さえも偽った、ただの醜い鬼だ。


一番やられて苛立つことをされて、返って気持ちの整理がついた。


距離を取った間に刀を握り直し、その淀んだ瞳を睨み返す。


ーーもうこれで躊躇いはしない。橋波の姿を使って俺を惑わし、果てには甘露寺になるなど愚劣の極み!


「…もうお前に肩入れする余地はない。ここをお前のあの世への架け橋にしてやる」

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(プロフ) - 凪さん» 読んで下さりありがとうございます!キメツ学園時空で結ばれることを祈りましょう…! (2020年2月3日 23時) (レス) id: 864d8b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
- ほんとに面白かったです、でも少しだけ悲しいなあってなりました。来世では結ばれて欲しいです (2020年2月3日 23時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - くまっ子さん» わーありがとうございます!!(*´ω`*)楽しんでいただけたなら嬉しいです! (2020年1月4日 23時) (レス) id: 864d8b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
くまっ子(プロフ) - 全部読みました!こういったお話は個人的に大好きなのでのめり込んでその日全て読んでしまいました!次の作品も楽しみにしてます(^^)お疲れ様でした(*´∇`*) (2020年1月4日 22時) (レス) id: 8aff784c04 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 澪桜さん» ありがとうございます!本誌の更新速度によって本編を進めていこうと思ってます(´∀`) (2019年11月13日 17時) (レス) id: 864d8b95f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年10月7日 18時

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