私とあなた。 (ページ30)

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阿部side

最近、Aちゃんから連絡が来ない。

なんでだろ？

研究発表会でも、見かけなくなった。

お互い似たような研究といっても、他大学だし、それは仕方ない。
俺も仕事が忙しく、なかなか論文も進んでいない。

それにAちゃんは就職先に悩んでいるようだった。
大学院は修士課程は2年間しかなく、大学院入学の１年後には博士課程に進学するのか、就職するのかを決めなければならない。
俺にも博士課程に進学するか、企業に行くのか何回か相談があったけど、進学も就職もしない俺には何も答えることができなかった。

何回か食事に誘ったけど、反応があんまりだ。
返事は「忙しい」「就活しないといけない」といった淡白な返信。
元々、絵文字を使わないからなんとも思わないが、なんだか嫌な予感がする。

深澤「阿部ちゃん阿部ちゃん、最近Aちゃんに会った？」

阿部「全然。向こうも忙しいみたい。なんで？」

深澤「俺、結構、2人でデートしてるんだ」

耳を疑った。
何、そこできてたの？
焦ってる姿を見せたくなくて、「そうなんだ」とクールに返事した。

深澤「Aちゃんにバレたよ、俺らのこと。
テレビ見たんだってさ。
俺と照が出てるやつ。
阿部ちゃんに仕事のこと内緒にされてて、悲しいって言ってたよ。」

阿部「まじか…だから最近冷たいんだね。
あんまり返信してくれなくてさ。」

深澤「あと、俺、阿部ちゃんに気を使わないからね。
もう失恋したくないから。」

あ…まじか…
そういうことね。
ふっかの久しぶりのマジな顔見て、自分は既に負けを感じた。

元々、ふっかはAちゃんにナンパ未遂という
強烈な出会いと印象与えてるし、
俺はたまたま、その後、研究会で繋がっただけ。
そこから俺は食事会を開いて、
また2人を引き寄せるようなことをしてきた。

何かの論文で、好意は出会ってから1秒よりも短い間に感じ、繰り返しの接触によって、その好意が増すっていうのを読んだことがある。
出会いの瞬間が、より印象的だと、好意と勘違いしてしまう時があると本で読んだこともある。

つまり、
運命の出会いっていうのは本当に存在してるっていうこと。

2人はそれを実現しているっていうことか…
論文にできそう。
って呑気に考えてしまってる俺は、本当にバカだなって思った。