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腕を掴まれ、びくりと止まる俺に、彼は優しく話しかけてくれる。
「…あの…ずっとここの農園見てたよね…？」
『……それが？』
少し焦りで口調がキツくなってしまい、彼は焦ったのかすぐに否定する。
「いやっあの…花、好きなのかなって」
鈍感すぎる彼に、俺は困惑した声を出してしまった。俺が王子ということに気づいてないのだろうか。
『あ…いや…まぁ…そうですね。』
「やっぱり！俺も好きなんだ、花。こっちきてよ！」
手を引っ張られ、言われるがままに連れて行かれ、そこには白いチューリップがあった。
「綺麗でしょ。この花言葉は"失われた恋"。なんか悲しいよね…でも、儚い感じが好きなんだよね」
話しながらチューリップを触っている彼に、俺はじっと見つめていた。
「……花言葉、好きなんですか？」
「あぁ、花言葉とか俺結構好きなんだ。だから、ちょっと詳しいだけ…笑。でもさ、花言葉を含めていろんな花をあげるって素敵でしょ？」
笑顔で笑いながらこっちを見る彼に、俺は思わず笑みをこぼしてしまった。
「…！笑った！」
『…笑ってません』
「いや！笑ったでしょ！」
『笑ってない！！』
「いや！！笑った！！」
「「………」」
腹を抱えて呑気に笑っている彼に、俺もつられ、一緒に2人して笑った。その後に俺は彼に連れられ、一緒にたくさん花を見た。たくさん花言葉を教えてくれて。楽しそうにする彼に、俺も一緒に楽しくなっていた。
「あ…もう夕方だね。ねぇ、時間大丈夫なの？」
『……あぁ、もうすぐ帰らないとかも。』
楽しい時間はあっという間にすぎ、もうすぐ城に帰らなければいけない時間になる。
ガ「……ねぇ、名前。なんて言うの？俺はガッチマン。ガッチさんって呼んで。」
キヨ、そう名乗ろうとした。でも、王子だなんてバレたらきっと離れていってしまう。俺は頭の中で別名を名乗ろうと必死に他の名前を考える。
ガ「……隠さなくていいよ。…気づいてたけど、君…キヨ王子だよね」
やっぱり。鈍感なんじゃない、気づかないふりをしていた。俺は我に帰り、何も言わずに俺は立ち去ろうとした。
ガ「…まって。最後に見せたいところがあるんだ。」
『…え、ちょっとまっ』
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作者名：わたなべ | 作成日時：2024年1月29日 15時
