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『ねえ赤羽くん?私達今、ふたりきりだよ』


俺を見据えるまっすぐな彼女の目が、やけにわざとらしかった。例えるなら、演技が下手な恋愛映画のヒロインのような。

別にそのセリフを言うのはヒロインじゃなくてもいいんだけど、夕日に照らされた彼女はむかつくことに幻想的で、きっと演じるならばヒロインだと思ってしまった。


「すげー今更なことを言うね」

『ははっ、そうだけどさ、改めてだよぉ。女の子とふたりきりでドキドキしない?』

「残念ながら」

『えー、私はしてるよ!』


真剣な瞳が朗らかな笑顔に変わって、静かな教室内にAの透き通る声が響いた。


残念ながら、なんて言ったけど、本当は俺だって、息が聞こえるほどのこの距離の近さが、ほんの少しだけ心臓に悪かったりする。

最近の彼女は、以前以上に俺の意識を颯爽と奪っていくから。

例えば今も、悩んだ時手を口元に運ぶ動作とか、やる気のある時髪を耳にかけることだとか、日常生活の中でAのどうでもいい仕草がいちいち視界に入ってくる。

そんな、俺以外のクラスの誰も気づかないような些細な癖に気づいてしまったのは、単に一緒にいる時間が長いからだろうか。それとも、俺がAを知らずに目で追っていたりするのだろうか。

前者であってほしいけど、おそらく後者なのだろうと、受け入れ難い事実を冷静に判断できてしまう自分が嫌になる。ただ、その事実を飲み込むことからは逃げるけど。

それに言い訳だってある。Aがたまに見せる照れた顔とか、女子らしい趣味とか私服とか、そういう部分はずるい、反則だ。あんなの、たとえ恋愛対象でなくたって、男としては、そりゃ、ね。

まあ、あんなに目立って明るければ、目で追ってしまうのも仕方ないと思う。そう、仕方ない。


悩みの種の彼女は、こっちの気も知らずに一呼吸置いてまた俺を呼ぶ。


『…ね、赤羽くん』


今度は、蕩けるように甘えた顔。これに虜になる男は一体何人いるのだろうと、知る由もなく知る気にもならない疑問が浮かんだ。


「はいはい、なんですかー」


虜にだけはなるまいと、冗談という鎧をまとって返事を煽る。



『抱きしめて』

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鏡 雨 。.(プロフ) - アリス(あふらん)さん» ありがとうございます!読んでいただけて本当に嬉しいです! (2019年1月2日 12時) (レス) id: 0e4fba863a (このIDを非表示/違反報告)
アリス(あふらん)(プロフ) - 完結おめでとうございます!話の雰囲気がとても好みでした。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!!ありがとうございます。 (2019年1月2日 11時) (レス) id: d39cf90419 (このIDを非表示/違反報告)
鏡 雨 。.(プロフ) - みあさん» ありがとうございます! (2018年8月6日 19時) (レス) id: e99495890a (このIDを非表示/違反報告)
みあ - 面白いです!頑張って下さい!! (2018年8月5日 21時) (レス) id: af930b47ff (このIDを非表示/違反報告)
鏡 雨 。.(プロフ) - 夢留さん» ありがとうございます!忙しく、更新のペースは落ちていますが、できるだけ早くお届けできるよう頑張ります! (2018年5月12日 15時) (レス) id: ce6f0d2a94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鏡 雨 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年4月11日 16時

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