9話 ページ11
イソップ「で、何があったんですか?」
『お、おお…落ち着いたかと思えば突然の尋問…』
イソップ「は?」
『いや怖…』
は?なんて言う人だと誰が思う?彼を知っている人が今のを聞けば「えっ…イソップどうした…?」ってなるよ。
彼、イソップ・カールは訳あって昔から自分に対してだけ当たりが強いのだ。それだけ大切にしてくれていると思えば嬉しいし、文句を言うつもりもなければ拒否するつもりもないけれど。
『えっとぉ…』
イソップ「…もしかして、誤魔化すつもりですか」
『えっ』
イソップ「僕にあなたの誤魔化しは効きません。そんなの昔から知っているでしょう?」
その通りだ。
彼とは誰より縁が長く深く、故に誤魔化しも嘘も通用しない。分かってはいても言いたくなかったのだ、彼らを守る為なんかではなく…
…嗚呼、なんて弱い存在。この人にも見限られるのではないか、なんて多少とは言え思っているだなんて。
イソップ「…ビクターさんが、泣いていました」
『っ…』
イソップ「“また”助けられなかったと。最初に真実に気付いていても意味がないと、泣いていました。嘆いていました。…それは他の人達も同じ。他の何か方法があったのではないか、そう考えては泣いているのを見掛けます。中には隠れて泣いている人も居ますが。
…この言葉が、何を示しているか。それが分からないほど、あなたは馬鹿じゃないでしょう」
…人と関わるのが苦手で、無口で。
でもいざと言う時は、誰かの為の言葉を紡ぐ。ゆっくりと、考えながら。
そんな彼が、思いのままに言葉を放つのは…きっと、自分を留めたいから。
イソップ「あなたが何に怯えているかは知りませんが、見つけた今僕が…僕達があなたを放っておくと思ったら大違いです。…分かっていますね」
『分かってる、けど』
イソップ「考える時間なんて与えませんよ。…それで逃げられては堪らない」
何処にも行かせない。
そう言う様に自分の手首を掴んだ彼は、何処かへと向かって歩き始める。その先に誰が居るか、分かっている。
…だから怖い。
別に良いと思っていたのに。仲間想いだね!と言いながら、半分馬鹿にしていて。そんなものだって、彼らに思って。
どうでも良いと思わないといけないって、いや違う…本当にどうでも良くて。
…嗚呼…この人達だから、怖いんだね。
…分かっていたよ。
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なっつ(プロフ) - え、、滅茶苦茶好きです….更新楽しみにしてます! (2022年1月27日 18時) (レス) @page12 id: f68b2b1abd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旺 | 作成日時:2022年1月12日 17時