11 ページ12
ただ、なんとなくだった。
昔よく行っていたカフェに顔を出したのは。
ミルクたっぷりのあのカフェオレが忘れられなくて、足を運んだ。
ここには思い出がたくさんありすぎる。
だけど、それと一緒に決別するのは勿体なくて。
(美味しいものには罪はないし)
お気に入りのチーズケーキの写真を撮った。
すぐ志麻くんに「今度一緒に行こうね」とメッセージを送る。
カランカランと心地よいベルの音がしたと思ったら、向かいの椅子に誰かが座る気配。
驚いて顔を上げた私は、すぐさま後悔した。
「やっぱり、おった」
「...さかた？」
ここから立ち去らなくちゃと思っても、体は椅子に縛り付けられたように動かない。
「これ、好きやったな」
そう言って私の手からフォークを奪いチーズケーキを口に運んだ。
「なんで、ここに」
「.....ここしか、知らんかったから」
Aがいそうな場所。
そう言って悲しそうに笑う顔は、もう見たくなかったもので。
向けられた視線を避けるように俯くと、「こっち向いて」少し掠れた声が聞こえた。
「ずっとここに通ってたんよ。いつかAに会えると思って」
「.....」
「...志麻くんの彼女になったんやな」
「分かってるなら、なんでここに、」
「志麻くんのこと好きなん？」
彼から発せられた言葉に思わず顔を上げてしまった。
何でそんなことを聞くんだろうか。
「当たり前でしょ。じゃなきゃ付き合わない」
「.....ずっと、一緒にいてくれるから？」
「は？」
「なぁ、俺もうAのこと1人にはせんよ。寂しい思いもさせへん。Aが望むんやったら歌い手もやめる」
「だから戻って来てくれへん？」
頭がカッとなった。
振り上げた右手は真っ直ぐ坂田の頬へ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 408人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆめ(プロフ) - こんにちは。二人の間でグラグラしている夢主と、行動を起こした坂田さんと、不安な志麻さんそれぞれの視点で進むお話がドツボです。まろまゆこさんのペースで応援してます、、！ (2020年1月31日 16時) (
レス) id: 8d18ba62e8 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26 - すげぇ、、、すき(告白) まーしぃとさかたんの汚い一面がまた面白いｗ これからも楽しみにしてます あとこれは完全な個人趣味ですが、こういう必要以上に改行しない作品好きですねぇ (2019年5月26日 15時) (レス) id: 68377bc296 (このIDを非表示/違反報告)
夜浪 紗奈 - 続きがめっちゃ気になる！これからも頑張って下さい！ (2019年5月11日 10時) (レス) id: ed71a26e06 (このIDを非表示/違反報告)
まろまゆこ(プロフ) - 夜浪 紗奈さん» ありがとうございます！ (2019年5月4日 16時) (レス) id: 0a41dd36db (このIDを非表示/違反報告)
夜浪 紗奈 - 想像だったんですか！想像でここまで、面白く書けるなんて…凄いですね！ (2019年5月2日 16時) (レス) id: ed71a26e06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まろまゆこ | 作成日時：2019年4月25日 15時
