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白石先生の視線の先は相変わらず瀕死の患者にある。そこに藍沢先生が「白石」と小さく声をかけると二人はアイコンタクトをして私を見つめた。

「わかった、早く入って!」

白石先生の強い瞳と視線が重なり、私達は流れるようにその場所を交換した。それと同時に電子音が鳴り響き冴島さんが「血圧50切りました!」と叫ぶ。私は静かに深呼吸をしてから、再び手を腹部に突っ込んだ。

『白石先生は右から両手で引っ張ってください、横峯先生は吸引をしたまま反対側に引っ張って』

そういうと白石先生が勢いよく広げてくれたおかげでよく見える。それと同時に増えた出血に横峯先生が「出血が...ッ!」と手を引っ込めると白石先生が声を荒げた。

「手を離さないで!!そのまま吸引!!」

『見つけました、右の総腸骨静脈からです』

直ぐに出血源を止血すれば血圧も異常値から元に戻ったようで室内に安堵の空気が流れる。パチリと重なった彼の瞳に私は小さく微笑んだ。

***

スタッフステーションに戻り、先ほどの患者メモをPCへ記録しているとICUから白石先生が戻ってきた。緋山先生と揉めながら。

「何度も同じ事言わせないで!一日二日泊めるだけならまだ我慢できるけど、ひと月とか、絶対に無理だからッ!」

「え、その違い全然分かんないんだけど」

「ん、緋山先生には分かんないよ」

藤川先生は二人の様子を見ながらくすくすと笑っている。この救命にピンチヒッターとして戻ってきたらしい緋山先生だったが今日の火事で家がダメになり、住む場所を探しているんだとか。

「じゃあ1日も駄目」

藤川先生がその会話に笑っている様子を見つめながら私はPCに向き合う。すると緋山先生が藍沢先生の話題を出したかと思えば、白石先生は落胆した声で「断られた。トロント大のレジデントだって」と静かに言った。

「...変わんないな、藍沢ってホント自分ばっか」

カナダのトロント大学といえば日本からも多くの医大生や医者が留学生として在籍していたはずだ。特に脳外科では世界屈指の症例数と医療水準を持っているトップクラス。

「こっちはこっちでやろ。私がフェロー鍛えて戦力にするから」

諦めたように肩を落とした白石先生に、緋山先生は「白石も変わんないね」と溜息をつきながら呟く。

「一人で背負わない方がいいよ」

そのまま「ICU見てくるわ」と出て行った緋山先生の背中を見つめて白石先生は首を傾げていた。

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笹原美桜(プロフ) - ネボーンじゃなくてREBOAじゃないですか?ドラマ沿いだと (2021年9月15日 22時) (レス) id: 9ad5622aaa (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - こんにちは、いつも楽しく読まさていただいています。誤字を発見したので、ご報告です。支持→指示だと思います。ご確認ください。 (2018年7月30日 7時) (レス) id: 4d27a7bcab (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - あおいろさん» 分かりました (2017年8月20日 15時) (レス) id: 3f08d45607 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - チナキンさん» ありがとうございます!!「」の前に名前を入れればいいのですが、入れていないのでものですみません。説明文で分かりやすいようにかけるようもっと頑張っていきたいと思います! (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - Rayさん» コメントありがとうございます。残念ながらただいま忙しい状況で、新しい小説を書く事は難しいと思われます。ですが、男主で案もいいと思いますのでかける環境になれば検討して行こうと思います。申し訳ございません。 (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mono | 作成日時:2017年7月27日 0時

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