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「脳外?」
脳外のコンサルを頼まれて首を傾げていた横峯先生をチラリと見てから私は新しい手袋をつける。その横で欠伸をする名取先生が視界に入り、この人は患者を救う気があるのだろうかと疑問に思った。他人に注意出来るほどの能力もなく私も彼らと同じ新人フェロー、しかしやる気がないのならこの場には要らないと思ってしまう。
そんなことを考えていると先ほどの熱傷患者をICUに移すというので、私もベッドを押して先生らと共に初療室を後にした。
再び私達が初療室へと戻ってきた頃には、患者二人を助けられなかった事を示す音が響いており目を見開く。その音が静かに止まると室内は静寂に包まれ、顔を歪める先生に視線を向ければ一人だけ別の色のスクラブを着た男がいた。
「CTの初見はここに書けばいいか」
脳外科でトップを争うエリート
「戻ってこないか、藍沢」
橘先生は「正直きつい」と言葉を零す。しかし彼は揺らぎない瞳で「すいません、救急に戻るつもりはありません」と言い切り、気まずい空気の沈黙が続いた。
『藍沢先生、これもよろしくお願いします』
私が彼の前まで向かい書類を手渡すと、固まっていた空気はそれを皮切りに動き出す。金属音が響く中で私の事を見下ろす藍沢先生は私がココにいる事に気がついていなかったようで、暫しお互い見つめ合っていたが彼は私の手元にある書類を受け取ると胸元のペンを取り出してサインをした。
***
昼食を早急に済ました私が脳外科のフロアでエレベーターから降りると、藍沢先生と出くわした。先ほどのこともあり少々気まずい。私が「お疲れ様です」と静かに頭を下げて通り過ぎようとすると、低い声が響いた。
「まさか本当に来るとはな」
『あれ、前に言いませんでしたっけ?』
「相談は受けたが報告は聞いてない」
どうやら報告し忘れていたようで「スミマセン」と謝ると、彼は「どうせ来るとはわかってたけどな」と変わらない表情で言い放った。他に話したいこともあるが昼休憩の時間は決まっており、気を使ってくれたのか扉の前で別れた彼の後ろ姿を見送って病室の扉を開く。
中にはベッドへ座る母の姿があり私は笑顔を作って「おはよう」と声をかけた。
「お医者さんみたいな格好ねぇ」
そういった母はしわくちゃな笑顔で私を見上げる。
神様は、残酷だ...
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笹原美桜(プロフ) - ネボーンじゃなくてREBOAじゃないですか?ドラマ沿いだと (2021年9月15日 22時) (レス) id: 9ad5622aaa (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - こんにちは、いつも楽しく読まさていただいています。誤字を発見したので、ご報告です。支持→指示だと思います。ご確認ください。 (2018年7月30日 7時) (レス) id: 4d27a7bcab (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - あおいろさん» 分かりました (2017年8月20日 15時) (レス) id: 3f08d45607 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - チナキンさん» ありがとうございます!!「」の前に名前を入れればいいのですが、入れていないのでものですみません。説明文で分かりやすいようにかけるようもっと頑張っていきたいと思います! (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - Rayさん» コメントありがとうございます。残念ながらただいま忙しい状況で、新しい小説を書く事は難しいと思われます。ですが、男主で案もいいと思いますのでかける環境になれば検討して行こうと思います。申し訳ございません。 (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mono | 作成日時:2017年7月27日 0時