32 ページ32
初療室に呼び出され急いで向かうと、丁度患者が運び込まれた時だった。
「緒方博嗣さん、41歳、渓流で足を滑らせて転落、頚椎損傷の疑いです」
「何、釣り人?」
「有名な料理人らしいですよ。ミシュラン5つ星だそうです」
名取先生の言葉に、緋山先生は「へぇ、すご」と返事をしながらもう一本追加でラインを取っていた。すると緒方さんが「サカナ」と口を何度も動かしているのが見えた。
『CT連絡しましょうか?』
「お願い」
隣の藤川先生がのぞいていた電子パネルを覗き込み、私はPHSを取り出して連絡をする。
それと同時に再びコール音が鳴った。
「翔北救命センターです」
白石先生が受話器を取ると、木皿津にある公園の森林内で倒れている人を発見したとのことだった。今日のヘリ担当である白石先生と冴島さんに続くように、灰谷先生は転けそうになりながら走って行く。
「気になる?」
「いやァ?大丈夫だよ」
緋山先生に冴島さんのことで茶化された藤川先生は強気に返事をしており、私はその様子に微笑みながらPHSを閉じた。
『藤川先生、今CT室空いてるそうですよ』
「よし、移動するか!」
藤川先生と緋山先生を筆頭にCT室に緒方さんを連れて行く方々を見つめ、私は次に運ばれてくる患者のために準備を始めた。
_「AFがある。脳梗塞かも」
「分かった。頭部MRIに連絡をしておく」
藍沢先生とアイコンタクトを取り私は直ぐMRIを使えるように連絡を取ったが、それから数分のことだった、この院内が騒がしくなるのは... ...
_「こちら翔北ドクターヘリ。ヘリの機内で患者が嘔吐、吐瀉物を浴びた冴島さんが意識を失いましたッ!!灰谷、白石も...ッ、吐き気、目眩の症状が出てます」
その内容にドクターもナースも一旦手元が止まる。私の隣にいた横峯先生が小さく「ど、どういうこと?」と呟いた。
『患者が、故意か事故か分からないけど毒物を飲んでいた可能性があるってことだよ』
その後直ぐ橘先生により、初療室周辺とヘリポート、緊急外来の立ち入り禁止という指示が出された。ナースや患者は勿論、機材や書類等の移動が開始された。
私たちはマスクや防護服の装着、そして除染機等をヘリポートまで運び出し待機の体制に入った。
『...毒、か』
私はこれから降りてくる先生方や患者に対してのマニュアルを脳内で趣味レーションし、頭上を見上げた。
1548人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
笹原美桜(プロフ) - ネボーンじゃなくてREBOAじゃないですか?ドラマ沿いだと (2021年9月15日 22時) (レス) id: 9ad5622aaa (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - こんにちは、いつも楽しく読まさていただいています。誤字を発見したので、ご報告です。支持→指示だと思います。ご確認ください。 (2018年7月30日 7時) (レス) id: 4d27a7bcab (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - あおいろさん» 分かりました (2017年8月20日 15時) (レス) id: 3f08d45607 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - チナキンさん» ありがとうございます!!「」の前に名前を入れればいいのですが、入れていないのでものですみません。説明文で分かりやすいようにかけるようもっと頑張っていきたいと思います! (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - Rayさん» コメントありがとうございます。残念ながらただいま忙しい状況で、新しい小説を書く事は難しいと思われます。ですが、男主で案もいいと思いますのでかける環境になれば検討して行こうと思います。申し訳ございません。 (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mono | 作成日時:2017年7月27日 0時