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『母の容体は?』
「今のところは落ち着いてるな」
先日脳腫瘍の手術をした母のことを思い出す。処置が終わったらしくTシャツを手渡されたので袖を通すと、藍沢先生はゴミを片付けながら「あれから何年だ」と聞いてきた。
『6年ですけど...』
私の答えにあまり興味はないのか何も返ってこなかった。”あれ”が伝わるのはおそらく私たちの間だけの会話だろう。なぜ聞いたのだろうか、あえて無視してるのだろうか、と私は眠たい頭で考えながら「ありがとうございました」と伸びをした。
「お前はもっと自信を持て」
『...はい?』
「もっと率先して前に出ろ、経験が大事だ」
『はぁ...』
彼は何を言ってるのだろうか、と首を傾げれば藍沢先生と視線が交わった。何だか我慢できずに少し笑えば、なんだと言う顔をされる。
「...何かおかしかったか」
『いいえ、何も』
私と藍沢先生は、ただの先輩後輩、患者の娘と医者、と言う関係でもない。しかしそれは所詮過去のこと、私たちはそれをなかったことかのように接している。
「白石から聞いた」
『何をですか?』
「フェローについてだ」
どうせ相当酷いことを聞いたのだろう、と私が苦笑いをしていれば彼は「白石は褒めてたぞ」と言ってきたので大層驚くことになった。
「...お前は何でここを選んだんだ?」
まさかそんなことを聞かれるとは思わず少し身構えてしまったが、ニコリと笑い返した。
『父の夢を叶えるために』
私は立ち上がりお礼を伝えて扉に手をかけた時、後ろから声をかけられた。
「しっかり休みは取れよ、また倒れるぞ」
『はいはい』
私は緩んだ頰を引き締めて、処置室の扉を開いた。
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笹原美桜(プロフ) - ネボーンじゃなくてREBOAじゃないですか?ドラマ沿いだと (2021年9月15日 22時) (レス) id: 9ad5622aaa (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - こんにちは、いつも楽しく読まさていただいています。誤字を発見したので、ご報告です。支持→指示だと思います。ご確認ください。 (2018年7月30日 7時) (レス) id: 4d27a7bcab (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - あおいろさん» 分かりました (2017年8月20日 15時) (レス) id: 3f08d45607 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - チナキンさん» ありがとうございます!!「」の前に名前を入れればいいのですが、入れていないのでものですみません。説明文で分かりやすいようにかけるようもっと頑張っていきたいと思います! (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
あおいろ(プロフ) - Rayさん» コメントありがとうございます。残念ながらただいま忙しい状況で、新しい小説を書く事は難しいと思われます。ですが、男主で案もいいと思いますのでかける環境になれば検討して行こうと思います。申し訳ございません。 (2017年8月20日 15時) (レス) id: 5cec4d6e77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mono | 作成日時:2017年7月27日 0時