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時間は刻一刻と過ぎていき、店内にある時計の短針は2時を指していた。
「臣、そろそろ…」
「はい、すみません。忙しい日にずっと居座ってしまって」
「それは別に大丈夫だけど。…ごめん。今日は臣になんて言ってあげればいいか、わかんないや」
まるで自分が振られたかのように苦しそうな顔をする直人さんの言葉に俺は静かに首を横に振った。
直人さんの優しさだけが心に染みた。
分かってはいたけれど、いざ現実を突きつけられるときつい。
Aは結局最後まであいつを選んだ。
Aの一番になることは出来なかったんだ。
「臣、一人で帰れる?」
「大丈夫っすよ。笑
子供じゃないんすから。じゃあ、失礼しました」
「うん、気をつけて」
直人さんにお礼を言いお店をあとにした。
本来ならば、今日は1:30には閉店するはずだけれど、直人さんのご好意で2:00まで開けておいてくれたのだ。
下のフロアも既に人は居なくなっていて、店員がフロアのモップ掛けをしていた。
外に出ると来る時に降っていた雪は雨へと変わっていた。
「傘持ってきてねえし…」
はあ…と深く溜息をつく。
もしかしてなんて淡い期待も抱くだけ無駄だった。
それに完全に俺の実力不足だ。
俺がAの事を繋ぎ止めることが出来なかったから。
今日の朝、あいつの元に無理やり行かせなければ今頃一緒にいられたのだろうか。
違う。そうじゃない。俺が望んでいることはそんな事ではなくて。
あいつが俺の事を一番に思ってくれることだったんだ。
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葵(プロフ) - たかあやさん» そう言っていただけると嬉しいです(;_;)更新暫く滞っていて申し訳ないですが、ご期待に添える事が出来るように頑張ります・・・! (2018年6月30日 19時) (レス) id: ea5accdc2b (このIDを非表示/違反報告)
たかあや(プロフ) - この感じの岩ちゃん臣は初めてですごいハマってます(*^^*)いいなぁ。こんな風に挟まれたい(笑)全くこの先の展開が読めない!!それがいい!!更新楽しみにしています!! (2018年6月30日 16時) (レス) id: 9513f20f64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2018年3月16日 13時