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『もう私、だめなの。
剛典が居ないと』
家に入るなり、俺の袖を掴みAはそう言った。
濡れてるからシャワー浴びて暖まろう。
俺がそう言ってもAは俯き首を横に振るだけだった。
Aの気持ちは痛いほどわかる。悲しそうに歪む顔からもどかしさがヒシヒシと伝わってきて苦しい。
「A、俺がいるから。お前が寂しい時辛い時、悲しい時、いつでも居てやる。だから、泣くな」
Aの細い身体をぎゅっと抱きしめると、Aは嗚咽を洩らし激しく泣いた。
俺は決めたんだ。もうこれ以上は何も望まない。Aが居てくれればそれでいい。
俺はAの逃げ道になる、と。
あいつの事を好きなままでもいい。それでも俺はAと居たかった。
もっと俺がAと早く会っていれば。そんな意味の無い後悔が頭の隅にチラついた。
それからシャワーを浴びずにお互い言葉も交わさずただ貪りあった。
Aへの愛はコップに入った水が溢れてしまったように留めなく溢れていった。
汗でとも雨でとも分からないAの濡れた前髪をすくい上げ優しくキスをした。
こんなにも誰かのことを愛おしいと思う日が来るなんて。
「A、...愛してる」
「わたしも、愛してる、おみ...」
ずっと欲しかったその言葉がただ純粋に嬉しくて、それがたとえ偽物だとしても偽りだとしても、このままAの為に生きようと思うほど幸せだった。
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葵(プロフ) - たかあやさん» そう言っていただけると嬉しいです(;_;)更新暫く滞っていて申し訳ないですが、ご期待に添える事が出来るように頑張ります・・・! (2018年6月30日 19時) (レス) id: ea5accdc2b (このIDを非表示/違反報告)
たかあや(プロフ) - この感じの岩ちゃん臣は初めてですごいハマってます(*^^*)いいなぁ。こんな風に挟まれたい(笑)全くこの先の展開が読めない!!それがいい!!更新楽しみにしています!! (2018年6月30日 16時) (レス) id: 9513f20f64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2018年3月16日 13時