許し ページ35
Aside
ps「ねえ、どうしてゾムを助けたの？」
どうしてって、怪我してたし
「...家の前で死なれても後味悪いですから」
しんぺい神さんはそっか、と笑った
苦しいような悲しいような声だった
医務室につき手当てを受ける
ps「無理、しなくていいからね」
「え？」
ps「君が此処にいてくれるなら、みんな喜ぶと思うけど嫌なことはちゃんと断るんだよ」
君、かなりお節介でしょ？といって笑う
図星だ。まぁでも、
「私にはいまのしんぺい神さんの方が無理してるように思いますけどね」
彼は驚いた顔をしてこちらを見る
「私のこと、嫌いですか？」
彼はなにも言わずに目の前に座り私の手を取る
その顔は困惑、縋るような泣きそうな顔
ps「俺の話、聞いてくれる？」
彼の手に力が入るのが分かった
ps「ゾムの事諦めてたんだ。もう駄目だって。医者は最後まで命と向き合わないといけないのに、誰よりも先に諦めた。」
どんなに頑張っても救えない命はある。軍医という立場にある彼は誰よりもその重みを知っているだろう
ps「だから助かったって聞いた時、神様はいるんだと思った」
神なんて、不確かなもの
ps「仲間を助けてくれた事、心から感謝してるよ。でもそれと同時に
嫉妬しちゃったんだ。君に」
嫉妬、私に？
ps「自分で言うのも何だけどね、俺、結構すごいお医者さんなんだ。
しんぺい“神”って呼ばれるくらいには」
なるほど
ps「君が此処にいてくれれば多くの命が助かるかもしれない、」
嗚呼、彼は優しすぎるのだ
ps「君の事、嫌いじゃないんだ。うまく言えないけど、」
「いいですよ」
ps「え？？」
「しんぺい神さんの言いたいことは解りました。」
ps「嫌じゃないの？？」
「貴方は優しいですね、普通嫌いならこんな事言ってくれませんよ。」
ps「でも、期待されるつらさを、自身を見て貰えなことのつらさを知ってるのに俺は...」
だから優しすぎるんだって
「だってそれが“普通”でしょう？」
利益を求めるのも、他人の才に嫉妬するのも人間としてなに一つ間違ってない
「私は貴方を許しますよ」
彼の手に力が入る
ps「ありがとう」
そう言って私に向けた顔は
心からの慈しみの笑顔だった
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作者名：わさび | 作成日時：2021年1月12日 1時
