3話 ページ4
夕方、ほとんどの学校が終わる時間に、1人の男子生徒が他の生徒に混じって校門を出て行った。
中学生だろうか、まだ幼さが少し残るが、世間一般でいうイケメンに当てはまることは間違いなかった。
この入り組んだ住宅街は彼の通学路らしい。
学校を出た時にはまだ多くの帰る生徒が周りにいたが、住宅街に入る頃には彼以外に人影は全く見られなかった。
彼のその様子を忍は近くのマンションの屋上から見ていた。
彼が1人になっている今が好機、と、両足に風を纏わせかなりのスピードで彼ｰｰｰｰｰｰ標的となってしまった少年の方へ飛んでいった。
ｰｰｰｰｰｰしかし。
(っ！！まずい！)
気配に気づいたらしい少年が、忍を視認したと同時に右手を構えたのだ。
(情報通りなら、彼はどう考えても戦闘体制に入ってる………！スピード落として敵意がない事を示さなければ！)
忍は慌ててスピードを緩めると、足の風を解いた。
それを見て、すぐに攻撃はしてこないと判断したであろう少年も、警戒はしているが戦闘体制を解いた。
『(とりあえず話はできそうだが、慎重にしないと。)あの、驚かせてすまない。いきなりなんだと思うだろうが、私に君を傷つける意志は皆無だ。だからどうか、話を聞いてくれないだろうか。』
両手を軽く上げ、敵意がないと示す忍。
少年は少しの間は警戒を続けていたが、忍が本当に攻撃を仕掛けてこない事や全く殺気を感じないことから、ひとまず話を聞いてくれる気になったようだった。
「何だ、話って。ｰｰｰｰｰｰというかまずお前誰だ？同じ中学………じゃねえな。知らねえ顔だし。」
『私の名前は風宮忍。君の言う通り、学校は別だ。………個性は風。さっきみたいに風を自由に操る事ができる。』
個性のカミングアウトは普段はあまりしないが、今回は少年の警戒を解くのが最優先だった。
ｰｰｰｰｰｰ忍は、できることなら戦闘はしたくなかった。
彼女は、自分の個性で人を傷つけるのは絶対に嫌だと、主に人を殺 す術を叩き込まれる度に強く思っていた。
だからこそ、出来るだけ穏便に。信用してもらうためなら個性の提示も構わない。
少年の方は、簡単に個性を打ち明けた忍に驚いたようだった。
『私からも１つ確認をいいだろうか？
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ君の名前は、轟焦凍で合ってる？』
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作者名：豆わさび | 作成日時：2022年4月20日 2時
