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6 -O- ページ10

…俺の目の前で、相葉は

綺麗なダークブラウンの瞳から

今にもこぼれ落ちそうな涙を

ぐっと唇を噛みしめては、堪えている。


彼の話では、彼は弟のことを

殺しはしなかったらしい。

ただ、一度でも「殺意」を以て

弟と向き合ってしまったということ。


…それが、相葉を苛んでいた。


「相葉…

…お前の弟は、それからどうしてる」


「分かりません…全く。

…彼、怪我してるんです。

多分、失血多量で死ぬとかは

ないとは思うんですけど…


…不安で。どうしようもなく」


問いかければ、相葉は俯いて

自分の足元へと目を落とす。

長い睫毛に覆われた瞳が

躊躇いがちに、地面を見つめていた。


「…お前が気にしているのは、

彼が二宮の側につかないかどうか…


…そういうことだろう、相葉」


俺はソファの背もたれに

ゆったりと背中を預けた。

脚を組んで相葉を見つめれば

彼はぶるり、と躯を震わせて

やがて、弱々しく頷いた。


「…俺は、二宮を殺すつもりです。

それが、俺の仕事ですから」


彼の掠れた声が、宙を舞う。


「けれど…

…もし、弟が二宮の側についたら

その時は、俺は彼のことを

殺すことにもなってしまうんです。


…もう、分からないんです。

俺は、何をするべきなのかが」


最後の一言は、胸を裂くような

そんな悲痛さと嘆きを以て

空気中に放たれた。


頭をくしゃくしゃっと掻く彼の

長く、しなやかな指もまた

彼の苦悩を表しているかのように

こきざみに震えている。


俺は息を吐き、立ち上がった。

真っ白に染まった街を見下ろし

未だに止まぬ、雪を眺める。


「相葉…。

…お前は、兄弟の絆を信じるか」


そう問いかけ、俺は相葉に向き直った。


「もしお前たちが、そのことで

決定的に引き裂かれていなければ…

…まだ、望みはあるかもしれない」


…俺と二宮のように、

決定的な「別れ」を経ていないのなら。

まだ、彼らならやり直せる。

…俺と二宮とは、違って。

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usamiya(プロフ) - こんにちは~♪パート更新お疲れさまです(^^)やっと兄弟再会したのに…そしてN宮さんの過去が気になる!!大変だと思いますが続き楽しみにしてます。頑張ってください、応援してます♪ (2013年2月18日 16時) (レス) id: 84d03e7a62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大宮いぶき | 作成日時:2013年2月18日 8時

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