検索窓
今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:16,566 hit

5 -three years ago- -N- ページ9

少しでも躯を動かせば、

手負いの躯が焼けるように痛む。

戦いで、ここまで傷を負ったのは

久々のことだった。


…大野、あんたはやっぱり流石だ。


オレの目の前で、彼は

二カ所にかなりの傷を負っているのに

平然とした態度で、オレを睨んでいる。

白い雪の中、黒いスーツを身に纏い

血の滴る刀を片手に立つ彼は

冷徹な美しさを湛えていた。


オレは笑う。

血が、熱く煮えたぎっている。

久々の、極限下での命のやり取りが

オレの感情を高ぶらせていく。


積もり積もった雪は踏み荒らされ

互いの流した血で、赤く染まっている。

オレは痛む躯に鞭打って、

もう一回、刀を構え直した。


「兄貴…いや、大野」


オレは吠える。


「そろそろ…決着、着けてやる!」


飛び出した。

真っすぐ、刀を構え。

弓から放たれた矢のように

吸い込まれるように、大野の懐に

一気に、飛び込んでいく…。


「二宮」


驚くほど静かで、冷徹な声が

オレの鼓膜を震わせたのは、その時だった。

次の瞬間、オレの顎に

下からいきなり襲いかかった

大野の左アッパーが突き刺さった。

顎が砕けるほどの衝撃に耐え切れず

のけ反ったオレの躯を、今度は

容赦のない飛び蹴りが突き倒す。


地面に崩れ落ちたオレの喉元に

大野の刀が突き付けられた。

オレを大野は、静かに見下ろしている。


「…二宮、戻ってこい」


「嫌だね」


オレが笑った瞬間、首筋に

焼けるような痛みが走った。


…大野の刀が、オレの首筋を

浅く、長く切り裂いていた。


「お前との縁はもう切れた」


彼は言い、刀を軽く一振りし

それを、静かに鞘に納める。


雪の降る中、彼の冷酷な眼差しが

オレを見据えたと思えば

彼はオレにくるり、と背を向け

雪を踏み締めて歩きだした。


「大野」


「次来たら、その時は殺す」


オレに背中を向けたまま、

大野は、オレとの決別を

はっきりと宣言した。


…白い闇に溶けていくその後ろ姿は、

やけに、小さいものに見えた。

6 -O-→←4 -three years ago- -O-


ラッキーアイテム

革ベルト


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
17人がお気に入り
設定タグ: , 大宮
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

usamiya(プロフ) - こんにちは~♪パート更新お疲れさまです(^^)やっと兄弟再会したのに…そしてN宮さんの過去が気になる!!大変だと思いますが続き楽しみにしてます。頑張ってください、応援してます♪ (2013年2月18日 16時) (レス) id: 84d03e7a62 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:大宮いぶき | 作成日時:2013年2月18日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。