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6 -M- ページ3

俺が、立ちはだかれば。


道を塞がれた雅紀は、

俺と同じ色をした瞳を爛々と燃やし、

俺のことを睨みつけた。


全身に走る身震い。

昨夜の穏やかな姿とは全く逆の

獣のような鋭い眼光が、俺を貫く。

あちら側の、人間の瞳…。


「潤、のいて…」


「もうやめてくれ、兄貴…

…あの人が何をやったかは知らない、

でも俺は兄貴に人殺しなんて、」


「どけ!」


俺の言葉を遮るように、雅紀が吼える。

炯炯と輝く瞳に、凄まじい

哀しみと憎悪の入り混じる表情が宿った。

刃物のような眼差しに捉えられ

俺は、完全に言葉を失った…。


雅紀が、ぐっと唇を

きつく噛み締めたのが分かった。

右手に握られたジャックナイフが

その切っ先に、俺を捉える…。


「どいて…

…じゃないと、刺すよ」


口調は穏やかで、震えているのに

そのダークブラウンの瞳には

明らかな「殺し屋」の表情が浮かんでいる。


俺を「弟」として見てない瞳。

俺にナイフを向ける彼は

その気になれば、いつでも俺を殺せるんだと

言葉なくして、俺に告げていた。


…でも。

俺には、兄貴に人を殺させるなんて

そんなこと、できるわけがないんだよ…。


俺は身構える。

躯の重心を下に、蹴りを入れやすい体制に入る。

雅紀の瞳が、俺の方を見据えて

ぐらりと、大きく揺らいだ…。


「…潤。

行かせてくれる気…ないんだ」


掠れた声で呟いた雅紀は

微かな笑みを浮かべ、その表情に

一瞬だけ、深い哀しみを過ぎらせる。


…悲嘆の色が、消え去った後には。


「なら……ごめん」


限りなく冷徹で、獰猛な。

殺しを生業とする人間の、

殺気に満ちた表情が浮かんでいた。


感情の消え去った瞳を睨み、

俺は、深く息を吸う。


…どうして、こうなった?

どこで、俺たちの運命は違えた?

どの分岐を選んでいたら、

俺たちは対峙せずに済んだ…?


終わりのない問いを胸に、

俺は、雅紀に躍りかかる。

大切な人を蹴るための脚は

いつもよりも、やけに重かった。

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usamiya(プロフ) - こんにちは~♪パート更新お疲れさまです(^^)やっと兄弟再会したのに…そしてN宮さんの過去が気になる!!大変だと思いますが続き楽しみにしてます。頑張ってください、応援してます♪ (2013年2月18日 16時) (レス) id: 84d03e7a62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大宮いぶき | 作成日時:2013年2月18日 8時

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