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4 -S- ページ14

松本の表情が、微かに強張る。


…どうやら、あの夜のことを

彼も、思い出したらしい。


「あの男が…大野」


松本は一回躯をぶるり、と震わせると

濡れたダークブラウンの瞳を煌めかせ

俺を真っすぐに見つめてきた。


「櫻井…

…俺たち、何かとてつもなく

大きなことに、巻き込まれてるのかもしれない」


「…どういう、ことだ?」


…松本の放った言葉に、何か

ただならぬものを感じて

俺が問いかければ、彼は

ズボンの裾を捲り上げる。


…太股に、ぐるぐると

白い包帯が巻かれていた。



「俺…昨日、二宮と一緒にいてさ。

あんた…あの調子だと、

追ってるんだろ…?

大野と、二宮のことを」


松本のダークブラウンの瞳は

いつの間にか鋭い光を帯びて

俺を、真っすぐに貫いていた。


「…ああ。それで」


彼の前では、嘘はつきたくない。

俺が先を促すと、彼は

捲り上げていたズボンを元に戻した。


「その時…

…二宮が、殺し屋に襲われた。


…俺の、兄貴に」


その言葉を吐いた瞬間、

松本の瞳に、一気に

哀しみが奔流となって溢れ出した。


唇をきっと噛み締めた彼は

それでも、沸き上がる激情を堪え

俺からは、目を逸らさなかった。


「これ…兄貴に、やられたんだ。

俺が…兄貴を、止めたから。

なあ、あんた知ってるんだろ?

俺の知らない…二宮、彼のことを」


彼は言い、微かな苦笑を漏らす。

ダークブラウンの瞳に光が踊り

その目元に、影を落とした。


「俺は知りたい…

…俺の夢を認めてくれた彼と

俺たちが関わろうとしている

全ての人の物語を。


俺たちは一体、何に

巻き込まれようとしているのか…

…それだけが、知りたいんだ」


俺を真っすぐに射抜く瞳。

その中には、何の穢れもない。

限りなく清廉で、純粋な

夜空の月明かりのように

清らかな光が燈っている。


俺は、息を吐いた。

松本を正面から見つめ返し

高鳴る鼓動を落ち着かせる。


…俺も、知りたい。

俺たちの運命が、

どこに向かっていくのかを…。

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usamiya(プロフ) - こんにちは~♪パート更新お疲れさまです(^^)やっと兄弟再会したのに…そしてN宮さんの過去が気になる!!大変だと思いますが続き楽しみにしてます。頑張ってください、応援してます♪ (2013年2月18日 16時) (レス) id: 84d03e7a62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大宮いぶき | 作成日時:2013年2月18日 8時

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