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3 -M- ページ13

彼は、俺の目の前でコーヒーを啜り

ふわっ…と、口元を緩めた。

その頬に、ふっと赤みがさす。


…よかった。


俺は息を吐くと、体制を崩した。

自分も怪我をしている以上、

楽な体勢でいた方が無難だろう…。


「…なあ、」


櫻井が声を上げる。

彼の強い光を湛えた瞳が、

俺の部屋着から覗く

包帯をじっと見据えていた。


…昨日、兄貴にやられた傷。


「その傷…どうしたんだ」


「…ちょっと、な」


「大野か」


俺の目の前で、急に櫻井は語気を荒げた。


…大野?

聞いたことがない名前だ。

でも、その名前を聞いた瞬間、

俺の躯は、小さく震えた…。


「大野…

…俺は、そんな人は知らない」


「…なら、いい」


俺が答えると、櫻井は

すぐに平然とした様子に戻って

再び、コーヒーに口をつけた。


…大野。

知らない、とは言ってみたものの

何故だろう、その名前に

とてつもなく大きな何かを感じるのは。

彼は…そいつに、やられたのか?


「なあ…櫻井」


俺は声をかける。

俺が処置を施した傷跡を

じっくりと確認していた櫻井が

首だけ動かして、俺に目を遣った。


「その傷、さ…

…もしかして、あんたの言ってた

大野、って奴にやられたのか」


そう問いかけると、彼の瞳が

一瞬だけ、刃物のように輝いた。


「…あんた、鋭いな」


彼は低く笑うと、包帯の上から

手首の長い傷をすっとなぞる。

その瞳に、激しく炎が躍った。


「あいつに刃向かう先に…

…あるのは、死だけだ」


櫻井の炯炯と輝く瞳が、

俺を捕らえて、離さない。


「お前も、一回あいつを見てる。

覚えてないか…?


俺と、お前が初めて会った日。

俺と二宮を蹂躙した、あの男のことを」


…その言葉を、聞いた瞬間。

俺の脳裏に、あの夜のことが

まざまざと蘇った。


黒いスーツを纏う、小柄な躯。

端正な横顔に、黒い短髪。

そして、全身から漂う気迫に

限りなく冷酷な光を湛えた瞳…。


…彼が、そいつなのか?

あの冷徹な姿は、俺の記憶の中

はっきりと焼き付いていた。

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usamiya(プロフ) - こんにちは~♪パート更新お疲れさまです(^^)やっと兄弟再会したのに…そしてN宮さんの過去が気になる!!大変だと思いますが続き楽しみにしてます。頑張ってください、応援してます♪ (2013年2月18日 16時) (レス) id: 84d03e7a62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大宮いぶき | 作成日時:2013年2月18日 8時

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